随意契約で建設中の島東部の仮設桟橋=10日午前(小型無人機で撮影)
防衛省が鹿児島県西之表市馬毛島で進める米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備で、随意契約した係留施設や仮設桟橋、滑走路の工事費が当初の計1680億円から少なくとも3508億円に倍増していることが20日、南日本新聞の調べで分かった。新たに工事用の構造物や火薬庫などが必要になったとして契約変更を重ねており、入札を経ないまま経費が膨らみ続けている。
一連の工事は国土交通省九州地方整備局が防衛省の支出委任を受けて発注した。随契で増額したのは、島の東部に造る係留施設、三つの仮設桟橋、滑走路新築の計6事業。大手ゼネコンや地元業者らでつくる共同企業体(JV)6社が設計や技術提案段階から請け負う。随契の理由は「外洋に面した無人離島での海上作業で、極めて特殊な条件」などとしていた。
契約関係書類によると、最も大きな増額は「五洋・東亜」JV受注の係留施設。2月に628億円、7月7日に522億円を積み増し、当初の961億円から2112億円に膨らんだ。工期も当初から1年延長し2027年3月とした。
このほか3本の仮設桟橋に126~189億円追加された。2本の滑走路も83億円、87億円とそれぞれ大幅に増えた。さらなる増額も見込まれる。
契約変更の理由は、係留施設では大量に製作するケーソン(箱形のコンクリート構造物)の土台不足に伴う追加、大型作業船用の係留アンカーの強化など。
仮設桟橋は防波堤やケーソン区画の設計などを変更した。滑走路は、掘削の発破作業で使うため火薬庫の設置が必要とし、鹿児島港で大型重機の組み立てヤードも整備する。また、濁水の処理施設や仮設沈砂池を追加し、管理・撤去の費用を今後計上する見通しを示している。
防衛省によると、増額は当初予算や補正の範囲内で、財源として在日米軍等駐留関連諸費を充てている。「早期整備に向け、適切な契約と予算措置を取っている」としている。