クビナガリュウの骨の上に、複数の丸い胃石が散らばっている岩の塊。胃石の間には、すりつぶされた食べ物のかけらが観察できる
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
北海道在住の化石ハンター仲間の森木和則さんから、ある小包が届きました。開けてみると15センチぐらいの岩の塊で、たくさんの2~5センチの丸い礫(小さな石)と化石片を含んでいます。裏返してみると、大きな骨の一部が露出していました。骨は表面に小さい穴がたくさん開いており、海生爬虫類、おそらくクビナガリュウの骨です。
同封の手紙によると、6月、北海道中央部に位置する芦別市の山中で、約8800万年前の白亜紀層を貫いて流れる河川の転石として発見したとのこと。私がクビナガリュウの研究を進めていることを思い出し、資料にと提供してくれたのです。
骨の上に散らばる丸い礫は、「胃石」と考えられました。クビナガリュウの仲間は、のみ込んだ食物をすりつぶして消化しやすくしたり、未消化物を押し出して胃の内部を洗浄したりするのに、この胃石を活用していたと考えられています。
標本を改めて観察してみると、礫の間に魚やアンモナイト由来と思われる胃の内容物がたくさん観察できました。食べたものを胃石で細かくすりつぶしているのがよく分かります。
日本では、同様の胃の内容物の化石から、ポリコティルスというクビナガリュウの仲間がアンモナイトを食べていたという論文報告が知られています。東京都市大学の中島保寿准教授に研究協力を依頼したところ、コンピューター断層撮影装置(CT)にかけて詳しく調べようということになりました。
以前報告したペリット(吐しゃ物)に続いて、クビナガリュウの謎の生態が明らかになるかもしれません。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)