鹿児島県の獅子島。先日発見した「大きな骨の塊」は、岩盤の深い場所まで。回収困難と判断。しかし近くの第2ボーンベッドで「歯」の化石発見。だがトラブル発生!

2023/10/09 11:31
第2BBでの化石発掘作業。骨をシリコン樹脂で保護して切り出そうとしたが…
第2BBでの化石発掘作業。骨をシリコン樹脂で保護して切り出そうとしたが…
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 9月、鹿児島県長島町の獅子島で第1ボーンベッド(骨化石の密集層、BB)を掘り下げると現れた大型の骨。ところが、岩盤の深い場所に続いており、ダイヤモンドカッターの刃が届きません。回収は厳しいと判断し、いったん封印することにしました。

 100メートルほど南にある第2BBへ移動しました。2022年に発見した砂岩質のこの場所は、約1億1千万年前の白亜紀当時の河川で土砂などが堆積した地層です。前回、爬虫類の歯の化石を回収し、東京都市大学の中島保寿准教授が鑑定を進めていました。その結果、この歯化石は白亜紀にオーストラリアに生息したワニの仲間に似ていることが分かりました。

 歯の周辺には大型の骨が露出しており、頭骨の可能性も考えられました。今回、この大型の骨を持ち帰ることが調査団の大きなミッションだったのです。

 削岩機や電動カッターを使い、骨の周辺を慎重に掘り下げていきました。削り出す過程で、周辺から、骨の主の歯茎から抜けたとみられる歯の化石がパラパラと出てきました。

 ここまでは順調だった発掘作業でしたが、またもやトラブル発生です。発電機の調子が悪くなり、機材が使えなくなってしまいました。手掘りでの回収は難しく、断念せざるを得なくなりました。第1、第2BBに残した骨を回収するためには、来年度以降もさらに継続して発掘調査する必要があります。

 岩盤を掘り下げる作業ができなくなったので、周辺の地層と埋蔵化石を調査することにしました。

 獅子島東部の海岸は、地層の堆積構造が大変よい状態で保存されています。地層を調査することで、当時の生物の生息環境や化石化の過程の解明につながると考えたのです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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