写真上:第3のボーンベッドに露出していた、恐竜と思われる骨片。写真下:竜脚類の可能性もある歯の化石。=いずれも9月1日、長島町獅子島
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
発電機の故障で、鹿児島県長島町獅子島での第2ボーンベッド(化石の密集層、BB)の発掘を中断した調査団。さらに南側の海岸へ、地質を調べながら化石を探して歩きます。300メートルほど移動すると、第1BBに似た赤褐色の砂質泥岩と礫質砂岩が分布する場所がありました。
ふと、地層にうずもれた黒褐色の異物が目に入りました。顔を近づけると、海綿状の骨組織が確認できます。どうやら恐竜やワニ、カメなど大型脊椎動物の化石のようです。周辺を見ていくと、大きな岩の下に、骨片が密集した場所があるではないですか。新たなBBのようです。
東京都市大学の中島保寿准教授たちに知らせたところ、この地層の周辺に調査を集中させることになりました。すると、地層の延長上にある崖から崩れた岩を見ていた中島さんが、大声を上げました。
駆け寄ると、30センチほどの岩の塊に、カメの甲羅(背甲)が丸ごと入っています。さらにこの場所からは、竜脚類などの恐竜の可能性がある歯の化石も見つかりました。研究室でのクリーニングが待たれます。
今回、島東部の海岸には、脊椎動物の化石を高密度に含む層が想定していた以上に広範囲にわたっていることを確認できました。化石ができた約1億1千万年前の白亜紀中頃は温暖な気候で、生物が劇的に進化した時期に重なります。獅子島の調査が、原日本の恐竜や周辺の多様な生物群の研究に大きく寄与するものと確信しました。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)