映画「ジュラシック・ワールド」に登場した「海のティラノサウルス」こと「モササウルス」。発見の舞台は大阪府南部、7,000万年前の地層が分布する山中。13年前のことだった

2023/11/23 21:00
モササウルスの顎の一部とみられる骨化石。上部に丸い歯の断面が確認できる=2010年3月、大阪府泉南市
モササウルスの顎の一部とみられる骨化石。上部に丸い歯の断面が確認できる=2010年3月、大阪府泉南市
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 モササウルス類は、約7千万~6600万年前の白亜紀の海洋に生息していたオオトカゲの仲間です。オオトカゲといっても、脚や尻尾を水中生活に適した形状に進化させた巨大な怪物で、「海のティラノサウルス」とも呼ばれます。映画「ジュラシック・ワールド」で、つり下げられたサメを巨大なモササウルスがパックリと飲み込むシーンを思い出される方も多いのではないでしょうか。

 この巨大モンスターが、実はこの日本にも生息していたのです。発見の舞台は2010年、大阪府南部の和泉層群と呼ばれる約7千万年前の地層が分布する山中でした。

 泥岩が厚く堆積した地層を貫いてできた小さな沢があり、私は化石を探しながらさかのぼっていきました。見つけたノジュール(塊)を割るたびに、棒状の異形巻きアンモナイトやサメの歯、殻がそろった二枚貝や植物の化石が次々と顔を出します。

 沢が蛇行して開けた石のたまり場で、ふとある転石が目に留まりました。最初は珪化木(木の化石)かと思ったのですが、手に取ってよく見ると違うようです。風化した表面に波のような筋が刻まれ、骨の組織の一部のようにも見えました。大きさは長さ約16センチ、幅約8センチで、側面には丸い断面がいくつも並んでいます。

 この産状(化石の出ている様子や見え方)には見覚えがありました。北海道で見つかったプリオサウルスというクビナガリュウの顎の化石です。その歯は牙の部分が川の石でこすれて根っこが残り、丸くなっていました。風化した表面や丸い断面がそっくりだったのです。

 白亜紀末期の海中で巨大な骨化石といえば、モササウルスの可能性が高いです。ここまで推察した上で、当時、カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館にいたモササウルス研究の世界的権威の小西卓哉博士に連絡を取ったのでした。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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