夕陽が沈む東シナ海沿いを走るおれんじ鉄道の列車(資料写真)
鹿児島県内43市町村でつくる県市町村振興協会は25日の臨時理事会で、第三セクター・肥薩おれんじ鉄道(熊本県八代市)への「全県支援」を続けることを正式決定した。協会基金を活用して2023年度から5年間で最大7億1900万円を負担する一方、「支援終了後は財政支援をしない」との条件を付けた。
13年度から10年で10億1500万円を上限に助成する現行の支援が22年度で期限切れとなることから、県と沿線3市(薩摩川内、阿久根、出水)が43市町村での負担継続を求めていた。
県と3市への付帯要請として(1)地域公共交通の維持・存続のための財政支援を国に要請(2)支援額を圧縮できるよう最大限努力(3)財政支援期間中の経営や中期経営計画の進捗(しんちょく)状況の報告-を明記した。協会を構成する4団体(県市長会、町村会、市議会議長会、町村議長会)は県に「他の地域公共交通機関の経営が安定化するよう支援に尽力」など計8項目を要請した。
臨時理事会後、県市長会長で南さつま市長の本坊輝雄理事長らが県庁を訪れ、塩田康一知事に「4団体の意見を尊重してほしい」と強調。塩田知事は支援継続に謝意を示し、「おれんじ鉄道の経営強化などを進めていく」と述べた。
助成金はこれまでと同様、線路や架線、トンネルなどの維持管理に充てる。協会の基金は、サマージャンボ宝くじの収益金を積み立てた市町村の共有財産で、23年3月末の残高は約74億円。
■「必ず約束は履行を」
「支援はするが、最後」。肥薩おれんじ鉄道への支援継続が決まった25日、塩田康一知事と面会した県市町村振興協会の理事は最後通告を突き付けた。どの市町村も財政に余裕はなく「苦渋の決断」を強調した。
市議会議長会長の川越桂路鹿児島市議会議長は「意見集約では基金からの拠出ではなく、貸し付けする方法もあるという厳しい声も出た」と明かした。「付帯要請事項は最大公約数。必ず約束を履行していただきたい」とくぎを刺した。
県は支援を求める理由に全域が貨物輸送の恩恵を受けていることを挙げた。
これに、町村議長会長の宮之脇尚美さつま町議会議長は「大隅地区や離島では恩恵が見えないという意見が出た。スクールバス存続などの問題も抱える中、なぜおれんじ鉄道だけという話もあった」と指摘。
町村会長の高岡秀規徳之島町長は「支援に賛成はしたが、半数以上が条件付きだった。最大限の努力をして黒字転換してほしい」と注文した。