来年3月で152年の校史に幕を下ろす松ケ浦小学校=南九州市知覧町南別府
南九州市知覧南部の海岸線は小さな入り江が多く、古くから交易拠点や漁港としてして栄えた「浦町」が点在した。門之浦、松ケ浦、聖ケ浦、東塩屋浦、西塩屋浦といった地名に、その名残がある。
学校前の国道226号を越えて南へ200メートルほど下ると、奇岩に囲まれた入り江の港に出る。校歌にある通り「はてしなき大海原」を望む、恵まれた環境にある。
数ある入り江の砂浜はウミガメの産卵地で、児童らは知覧町ウミガメ保護研究会と協力して卵の保護に取り組んできた。初夏に卵を掘り出し、校内のふ化場に移す。自然な状態を保つため毎日地温を測り、暑い日には水をまくなどふ化するまで面倒を見る。
海岸の清掃を兼ねた、漂着ごみ調査も恒例行事だ。こうした取り組みが評価され、2018年度には環境美化教育の優良校として環境大臣賞を受賞した。
22年度は創立150周年に当たり「未来へつなぐ松ケ浦の輪」をキャッチフレーズにさまざまな記念行事を行った。ドローンによる「150」の人文字撮影では、教師と児童で30人足らずのミニ校に、助っ人の地域住民が続々と集まり、結束の固さを示した。
昭和30年代に600人を超えた児童数は本年度19人。来年3月末で閉校し、霜出小学校に再編統合される。児童らの合言葉は「最後の1年を最高の1年にしよう」。伝統校の誇りを胸に学校生活を送っている。
●メモ 1872(明治5)年、藩政時代からの稽古所が学制発布に伴い小学校となり創立。旧知覧郷で2番目に長い歴史を誇る。1908年から現在地。56(昭和31)年に校歌制定。2018(平成30)年度、環境美化教育優良校等表彰事業の環境大臣賞受賞。
■南九州市立松ケ浦小学校 校歌
作詞・光瀬 国夫
作曲・武田恵喜秀
一
空は青空 はてしなき
大海原を 望みつつ
みどりの眉根 輝くは
自主の精神 はれやかに
そびゆる我が校 松ケ浦
二
雲は旗雲 さつま富士
清き山河を 讃えつつ
集うひとみに 溢るるは
誠実の光 はつらつと
輝く我が校 松ケ浦
三
我ら国の子 潮風に
心と体 きたえつつ
つなぐ手に手に 脈うつは
友愛の血潮 高らかに
栄えよ我が校 松ケ浦
(南日本新聞2024年5月6日付)