2023年11月3日、おはら祭でそろいの法被を着て踊る「世界平和統一家庭連合鹿児島」の踊り連=鹿児島市
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の公共施設利用を巡り、地方自治体の対応が割れている。福岡市は判断を保留することで事実上の拒否。水戸市は市長が拒絶する姿勢を明確にしている。山口県下関市や岡山県は「断る理由がない」として許可した。鹿児島市は施設利用の方針は定めていないが、教団が11月のおはら祭への踊り連参加を申請。市はその可否の判断を通して教団に態度を示すことになる。
「市が所有する公の施設において、国の見解が示されるまでの間、旧統一教会関連団体からの利用申請に対する許可を保留する」。福岡市は2023年6月、庁内の市政運営会議で対応を決めた。市や公表資料によると、教団は伝道目的を隠して活動し、施設内で新たな被害が発生する恐れがあるため、「漫然と利用を許可し続けることは看過できない」と判断した。
これに対し教団と信者は24年3月、差別的な扱いを受けたとして、市に損害賠償を求めて福岡地裁に提訴した。市は争う姿勢を示している。
水戸市は22年10月、「国の見解が示されるまでの間、市の公の施設の貸し出しを行わない」とする高橋靖市長のメッセージを出した。市としての決定ではなく、市長個人の政治姿勢。訴訟リスクを覚悟した上で公表し、以後教団からの利用申請はないという。
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下関市生涯学習プラザで24年4月、教団の「日臨節83周年記念大会」が開かれた。利用を許可した同市教育委員会は「地方自治法に基づき、正当な理由がない限りは不許可にできない」と説明する。
岡山県生涯学習センターでは同年6月、教団の友好団体「世界平和女性連合」の弁論大会があった。県教委は「国による解散命令請求の結論が出ておらず、一般の団体と同様に審査した。規約で禁じる宗教的活動などには当たらないため許可した」とする。
両教委には、市民団体から利用を拒否するよう求める要望書が出されている。
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鹿児島市は22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件の後、教団関連団体主催のイベントを三つ後援していたと公表し、いずれも取り消した。
おはら祭は、会長を下鶴隆央市長が務め、事務局を市役所に置くなど、市が中心的な役割を担う。下鶴市長は事件以降の市議会で、教団に関し「社会的に問題が生じていると認識している。政教分離の原則に十分配慮して市政運営に当たる」と答弁。おはら祭への参加可否については定例会見で「振興会で規約に基づき判断する」と述べるにとどめている。