〈資料写真〉9月29日、袴田ひで子さんからのビデオメッセージを見る原口アヤ子さん=鹿児島県内の介護施設
袴田巌さん(88)の再審で、検察が控訴を断念し静岡地裁の無罪判決が確定することが明らかになった8日、鹿児島県の「大崎事件」で殺人などの罪に問われ、約45年にわたり無実を訴える原口アヤ子さん(97)の支援者は「袴田事件を今後の司法の教訓にすべき」と語気を強めた。結末に安堵(あんど)するとともに「次こそはアヤ子さんに無罪を」と口をそろえた。
「検察が証拠の捏造(ねつぞう)を認めていない。本質は変わらないままだ」。大崎事件弁護団の鴨志田祐美事務局長は、手放しで喜んではいない。検察の控訴断念は「再審請求審の司法判断がまちまちで、長期間にわたり袴田さんの法的地位が不安定だった」ことを一つの理由としており、「責任のなすりつけ合いではなく、司法全体で過ちを認め、再審の制度改革に向き合わなければならない」と指摘した。
原口さんを長年支える武田佐俊さん(81)=宮崎県串間市=は、親交のある袴田さんの支援者から一報を受け、「執念の勝利だ」とたたえたという。しかし「一人の罪のない人間を苦しめた。誰が責任を取るのか。むなしさが残る」と口にし、「司法は他の再審請求事件を見つめ直すきっかけにしてほしい」と訴えた。
森雅美弁護団長は「控訴理由は見当たらず当然」と評価する。「袴田さんがこれ以上苦しまずに良かった。後に続いて、大崎事件でも無罪を勝ち取りたい」と力を込めた。