薩摩藩英国留学生記念館スタッフ:下迫田 樹一さん(いちき串木野市シティセールス課)
いちき串木野市羽島にある薩摩藩英国留学生記念館。鎖国政策下の幕末、西洋の文化を学ぶために羽島港から英国に旅立った19人の留学生の旅路や功績を紹介する。「推し」の留学生は「長沢鼎(かなえ)」。長沢の行動力に影響され、自身も「とにかく動くこと」を大事にしている。
■知識ゼロからのスタート
鹿児島国際大学時代は、長沢研究の第一人者で、米文学専門の森孝晴教授のゼミに所属。「当時は教授の話に出てくるだけで関心は薄く、功績もあまり知らなかった。それが薩摩藩英国留学生の生涯を紹介する仕事に就くとは」と思わぬ縁に驚く。
卒業後、地元いちき串木野市で働きたいと記念館の会計年度任用職員に応募。2021年4月から1年間、展示の案内を任された。ところが8月中旬から、新型コロナウイルスの影響で休館に。本の整理や、市街地から記念館までの県道横に並ぶPR用フラッグポールの補修をするなど、来館者を待ちわびる日々が続いた。それだけに1カ月半後に営業再開し、久しぶりに来館者と接すると「緊張したと同時に、案内ができてうれしかった」。
22年4月、正式に市役所職員となり、記念館へ配属され、2年目がスタート。質問されて分からなかったことを本で調べたり、森教授に聞いたり、自分なりに知識を深める努力も続ける。来館者は子どもから大人までさまざま。「幅広い層が留学生に興味を持つきっかけになれば」と来館者の視点に合わせた話し方を心掛けている。
■長沢の魅力伝えたい
記念館は24年7月に、開館10周年を迎えた。11月2日からは、13歳で英国留学生に選ばれ、後に米国でワイン王と呼ばれた「長沢鼎」の特別企画展を開催する。
記念館の建設時、収蔵品集めに苦労していた時、貴重な資料を多数提供してくれたのが、米国に住む長沢の子孫だった。「記念館にとって長沢は特別な人」と語る。資料が最も充実する留学生だけに、企画展の準備にも力が入る。
森教授が監修し、今年3月に発刊した長沢の伝記漫画の編集にも関わり、長沢の知識はばっちり。「どんな世代にも楽しんでもらえる案内ができるはず。記念館を一度も訪れたことがない人も気軽に来てほしい」と期待を寄せる。
■今後の目標
記念館に来た人に、「説明が分かりやすかった」と思ってもらえるよう、その人に合わせた説明を心掛けたいです。地元いちき串木野市でも薩摩スチューデントについて知らない人はまだまだ多いので、記念館の外や、記念館内に併設されたカフェでのイベント開催など、記念館に足を運んでもらえるような活動をしていきたいです。
■今これに夢中です
「卓球」
中学から大学まで「卓球一筋の人生」でした。今年7月、地元のチームに入り、久しぶりに卓球を楽しんでいます。開館10周年イベントの後にある大会に向けて週2回猛練習中です。
― ◆ ―
■下迫田 樹一(しもさこだ・きいち) さん
いちき串木野市生まれ。串木野中学校、れいめい高校、鹿児島国際大学を卒業。2021年より、いちき串木野市の会計年度任用職員として、薩摩藩英国留学生記念館で展示の案内などを務めた。22年、市の正規職員となり、同記念館の案内や管理、広報など、業務全般を担当する。24年発行の漫画「バロンナガサワ―羽島から世界へ―」の編集にも携わった。
フェリア603号(2024/11/02)