学級経営の光になるか…担任を固定しない「チーム担任制」導入進む 一人で責任抱え込まず、互いの強み生かす制度に期待

2024/12/03 11:48
合同で指導する中学年チームの教員3人=志布志市の伊崎田小
合同で指導する中学年チームの教員3人=志布志市の伊崎田小
 鹿児島県志布志市の伊崎田小学校(66人)は本年度から、学級担任を固定せず、複数人で受け持つ「チーム担任制」に取り組んでいる。複数人が関わることで担任が一人で責任を抱え込まず、安定した学級経営が期待されている。

 11月中旬、3、4年生計22人の児童が、各学年1人ずつ順番に廊下に出て、国語の教科書を手に音読を始めた。3年生は瀬戸山泉生(みずき)教諭(24)が、4年生は田代皓亮(てるあき)教諭(42)がそれぞれ評価。教室では小田ひとみ教諭(53)が、順番を待つ児童たちを見守った。

 伊崎田小は1学年1学級の小規模校。低学年、中学年、高学年ごとに教員がチームを組む。ベテランと若手を組み合わせた3~4人で構成する。中学年は、主に瀬戸山教諭と田代教諭が3年と4年の担任を月ごとに交代して受け持つ。特別支援学級を担当する小田教諭は、2人が休んだ時の代役などのサポートを担う。

 採用1年目の瀬戸山教諭は「学級経営を一緒に進められたり、困った時にすぐ相談に乗ってもらえたりするのでありがたい」と感謝する。児童からも「いろんな先生に教えてもらえて楽しい」と好評だ。保護者の30代女性は「先生が多忙で大変と聞く中、明るく働く姿を見ると安心する」と好意的だ。

 「新卒の教員にいきなり一人前の仕事を求めるのは厳しい」。チーム制を採り入れた大山昭二校長(55)はこれまで、学級経営や授業づくりに一人で悩む若手教員の姿を見てきたという。周りの教員が自分の仕事に加えて若手をサポートする体制にも限界を感じていた。「勤務時間内に助言指導できる仕組みが必要」と考え、導入に踏み切った。

 助言役のベテラン教員の負担が大きくなりがちだが、情報通信技術(ICT)分野では若手がサポートにまわることも。大山校長は「互いの強みを生かし、弱みを補い合えているのではないか」と利点を語る。

 チーム制と同時に始めた一部の教科担任制は、教員の専門性向上が目的。専科教員のいる音楽や2学年合同で行う体育を除く、国語や算数が対象だ。複数人で指導することもあるが、1人で可能なら、残る教員は授業準備などに充てるという。

 学校経営に詳しい鹿児島大学教育学部の高谷哲也准教授(46)は「新たな取り組みに挑戦し、そのメリット、デメリットについて情報が得られる意義は大きい。得られた知見の共有を期待したい」と評価した。

■「校長は責任を負う覚悟を」

 伊崎田小は11月1日、チーム担任制のワークショップを開催した。モデルとなった兵庫県稲美町立加古小校長を昨年度まで務め、現在は稲美中教諭の吉田博明さん(60)が講演。導入の狙いと利点を紹介した。その要旨を紹介する。

 チーム担任制に取り組んだ目的は、学級崩壊から児童を守るためだった。教員は1人で学級を経営するため、悩みを抱え込みやすい。うまくいかなければ、新年度に担任を替えてリセットする。これでは根本的な解決にならない。

 私が加古小で取り組んだのは2022~23年度。全学年1学級で、1週間ごとに担任が交代する。結果として、どの学級も非常に安定した。教員の経験などによって指導の質に差が生じがちだが、複数人が関わることで平均的な質を担保できるようになった。担任1人では見落としていた児童の長所や課題に気付くことができた。児童も複数の担任の中から、話しやすい先生に相談できるようになったようだ。

 課題は推進する上での校長の覚悟だ。校内外から疑問や反対の声が寄せられた時に正しい道筋だと説得できるか。責任の所在をはっきりさせることも大切だ。授業は実施した教員の、いじめや不登校などの問題が生じたらチーム全体の責任。そして最終的には校長が責任を負うことだ。

 チーム担任制は、1人で学級を担任することによるマイナスがゼロになるシステム。ここをスタートラインにして、少しでも良い学級、学校をつくっていかなければならない。

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