なぜ第2エンジンだけが…燃焼試験で2度目の爆発、JAXA小型ロケット「イプシロンS」 原因解明至らず開発苦戦、世界シェア左右する参入遅れ危惧する声も

2025/01/20 07:00
2段目エンジンが爆発した「イプシロンS」の燃焼試験=2024年11月26日、南種子町の種子島宇宙センター(JAXA提供)
2段目エンジンが爆発した「イプシロンS」の燃焼試験=2024年11月26日、南種子町の種子島宇宙センター(JAXA提供)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が小型固体燃料ロケット「イプシロンS」の開発に苦戦している。第2段エンジンの燃焼試験で2度目の爆発が起き、2024年度の実証機打ち上げを断念した。世界で小型ロケットの開発競争が激化する中、原因次第で打ち上げが1年以上遅れる可能性があり、専門家は「将来のシェアに響く」と危惧する。

 「前回(の爆発時に)設計は妥当と判断したが、同じような事象が発生している。ゼロから確認する」。開発責任者の井元隆行プロジェクトマネジャーは24年末、状況説明会で原因究明への強い覚悟を口にした。

 2度目となる爆発が起きた燃焼試験は、同年11月26日に種子島宇宙センター(南種子町)であった。点火後17秒で固体推進薬を燃やすモーターケース(圧力容器)の燃焼圧力が予測値より高くなり始め、約49秒後に後方部分から燃焼ガスが漏れ出し爆発に至った。

 第2段は23年7月に秋田県での燃焼試験中に爆発。この時は点火装置が熱で溶けて後方で爆発が起きたと特定し、点火装置に断熱材を巻く対策を取った。今回は点火装置の溶融はなかったが、圧力の推移や後方での爆発に共通点がある。

 JAXAの岡田匡史理事は「根っこが同じなのか、異なるのか。丁寧に評価する必要がある」と強調。各種データの評価結果は2月に取りまとめる予定だ。

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 「イプシロン」は06年に運用を終えた「M5」の後継機。10年に開発が始まり、13年に初号機を打ち上げた。2~6号機は能力を3割増強した強化型として運用。開発中の改良型「イプシロンS」では、大型液体燃料ロケット「H3」と技術や部品を共通化し、コスト低減や性能向上を図る。

 爆発した第2段エンジンは、推進薬量を3トン増やし、全長を0.3メートル伸ばした。同様に大型化した第3段は燃焼試験を終えており、埼玉工業大学の福地亜宝郎(あぽろ)教授(燃焼推進工学)は「第2段だけ特殊なことをしているとは考えにくい。原因を想定しづらい」と首をかしげる。

 圧力容器内の断熱材は場所によって厚さが異なる。福地教授は「ゴムのような推進薬に亀裂が入って変な燃え方をし、断熱性能が悪くなった可能性はある」と言及。「もし容器や固体推進薬の形状の設計が要因となった場合、改修には相当な時間を要する」と話す。

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 内閣府によると、22年に世界で打ち上げられた人工衛星は2368機で、10年前の約11倍に上る。多数の衛星を連携させて一体運用する「コンステレーション」の登場が背景にある。

 今後も小型衛星打ち上げの増加が見込まれる中、世界各国で民間事業者による小型ロケット事業への参入が加速。24年時点で27社に上るとされ、国内でも民間2社が開発を進めている。

 宇宙開発に詳しい的川泰宣・JAXA名誉教授は「小型ロケットの市場は大乱戦に入る。早く立ち直るためにJAXAはきちんと予算と人員を充てることが大事だ」と指摘する。

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