日銀は24日の金融政策決定会合で、物価や景気のコントロールに使う政策金利の追加引き上げを決めた。鹿児島県内では金融政策正常化や日米の金利差縮小による円安是正への期待が聞かれる一方、中小企業の資金調達や家計への負担増を懸念する声が上がった。
鹿児島銀行の郡山明久頭取(67)は「日本経済の緩やかな回復と金融政策正常化に向けた一連の動きであり、タイムリーな判断」と歓迎する。影響は注視していくとした上で、「メリットを享受できるような金融商品の提案、情報提供や積極的な融資による支援を引き続き行う」とコメント。預金・貸出の金利引き上げについては、市場環境なども考慮して決めるとした。
円安に伴う原材料価格の高止まりや人手不足、物価上昇による消費者の買い控えなど、中小企業は苦しい経営が続く。県中小企業団体中央会の小正芳史会長(75)は、円高を促す段階的な利上げの必要性には理解を示しつつ「金利が上がれば銀行への返済額も増える。ゼロゼロ融資の返済負担による倒産も続く。借り入れしている企業にとってメリットはない」とぼやく。
日銀は利上げの判断材料に、2025年も高水準の賃上げが見込めることを挙げる。ただ24年春闘は、大手企業の平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超えた一方、中小企業は3%台にとどまり、鹿児島でも規模が小さいほど水準は低い。連合鹿児島の下町和三会長(64)は「賃上げは地方まで波及しきっていない。住宅ローンを抱える働き盛り世代の生活が不安定にならなければいいが」と懸念する。
家計にとっては、預金利息の増加という恩恵も見込まれるが、住宅ローンなどを抱えていれば金利上昇で負担が増す恐れがある。今後さらなる利上げも予想され、ファイナンシャルプランナーの瀬尾由美子さん(68)=鹿児島市=は「先々の資金が必要な人は、今が返済計画を見直すタイミングだと思う」と指摘する。
金利が上がると株価が下がる傾向にあるため、資産運用ではリスクの比較的低い債券などでの投資を選ぶ動きが出てくると分析。「多少値下がりはあるかもしれないが、一喜一憂せずに長期的な視点で判断を」と呼びかけた。