〈資料写真〉2024年11月4日、ごう音とともに上昇するH3ロケット4号機=南種子町の種子島宇宙センター
日常生活で当たり前となっているカーナビやスマートフォンの位置情報サービスを支えているのが、2日に鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから「H3」ロケット5号機で打ち上げられる測位衛星「みちびき」だ。内閣府は現在の4機から7機体制にし、2026年度からは自国の衛星だけでも国内向けのサービスを提供できるようにする計画だ。将来的には、一般的な受信機での位置情報の精度を現在の5〜10メートルから1メートルにする目標もある。
「他国に頼らず、みちびきのみで測位サービスを提供できるようにするのは政府の悲願。経済活動や安全保障にとっても重要」。1月30日の同センターでの会見で、三上建治内閣府準天頂衛星システム戦略室長は力を込めた。位置情報サービスは、車の自動運転やスマート農業などにも欠かせないシステムとなっている。
内閣府によると、地球全域で使える全球測位衛星システム(GNSS)を運用するのは米国、ロシア、欧州、中国。24年11月現在で米国は31機、中国は50機体制をとっている。一方で、日本とインドは自国を中心とした限定地域向けのシステムだ。
位置情報サービスでは、縦、横、高さ、時間を特定するために4機以上の測位衛星からの電波が必要になる。また、測位衛星が日本上空にあれば電波を遮るものが減り、利用者は安定して受信できる。
18年から運用する4機体制では、日本上空に1日約8時間ある「準天頂軌道」に3機、地上からは止まっているように見える赤道上の「静止軌道」に1機を配置。準天頂軌道の衛星は日本で電波を受信しにくい時間帯があるため、現在の位置情報サービスでは他国の測位衛星が必須となっている。
7機体制になると、常時4機以上のみちびきからの電波が日本に届く。内閣府は30年代にさらに衛星を打ち上げ、将来的には故障にも対応できる11機体制にする考えだ。
今回と25年度に打ち上げられる3機では、衛星同士や地上施設との距離を測定して位置情報の精度向上を目指す研究も実施される。11機体制になれば、位置情報の精度を1メートルに改善できる見込みという。
みちびきは、生活を支えるインフラとしての活用が期待される。専用受信機を使えば、精度数センチの位置情報の提供や、インターネットが不通となった地域にも災害情報を送れる機能を備える。自動航行や視覚障害者の介助支援サービスでの活用研究も進む。三上室長は「みちびきの位置情報のさらなる利用拡大に努めたい」としている。
◇H3ロケット5号機、きょう午後5時半打ち上げ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は31日、2月2日の新型基幹ロケット「H3」5号機の打ち上げ時間を午後5時半に決定したと発表した。当初予定日だった1日は射場の種子島宇宙センター(南種子町)の天候悪化が予想されたため延期されたが、2日の天候は今のところ打ち上げに影響はなさそうだという。