青息吐息のバス業界、運転手足りず応募も低調、収支改善ままならず…減便や路線網縮小避けられぬ負のスパイラル、細りゆく公共の足の活路はどこに

2025/02/03 18:00
市街地を走る鹿児島市営バス=同市山下町
市街地を走る鹿児島市営バス=同市山下町
 鹿児島市交通局のバス事業で、運転手不足が深刻になっている。2024年度に入り、委託先からの運行業務返上が相次いでいることが主な理由。欠員解消の見通しは薄く、25年7月のダイヤ改正で減便や路線網縮小は避けられない情勢だ。これまで経営赤字が問題視されてきた交通局だが、目下の課題は運転手確保へと局面が変わっている。

 交通局の路線バスは22路線あり、うち北営業所(伊敷台7丁目)管轄で共同運行を含む13路線は南国交通に運行委託してきた。同社は24年4月、自社の運転手不足を理由に3路線を返上。ほかにも日ごと、便ごとの返上が常態化している。

 業務が戻されたことで、交通局の必要な運転手数は以前の82人から、25年1月現在で100人まで増加。一方、求人への応募は低調で採用が追いつかず、在籍者は同月92人にとどまる。

 欠員8人分の業務は残業や休日出勤でカバー。24年4~12月の時間外労働は月平均30時間で、従来から倍増した。最大で単月69時間に達した職員もいる。

 「乗客の命を預かっており、運転手の健康を後回しにはできない」。交通局の高橋公弘次長は、時間外労働の増加が安全運行に与える悪影響を懸念する。法律や労使協定の範囲内であっても、超過勤務を少しでも減らしたいとの考えだ。

 ただし働き方改革で乗務間の休憩期間が「8時間」から「基本11時間、最低9時間」となったことなどもあり、人繰りは厳しさを増している。

警戒感

 運行業務を返上した南国交通も、運転手不足にあえぐ。同社自動車事業部によると、受託した北営業所関連では現在40人必要だが、実働は34人。本体の鹿児島営業所(小野町)も必要147人に対し在籍133人と14人の欠員で、応援を出すことも困難という。担当者は「返上は大変申し訳ないが、自社路線の維持すらままならない状況に陥っている」と明かす。

 同社は5年間の勤務を条件に大型2種免許の取得費用を全額補助するほか、九州各県の高校を回って就職を呼びかけるなど運転手確保策を打つものの、不足分を補うには至っていない。受託路線の返上は当面続くとみられる。

 交通局は、免許取得費補助や会計年度任用職員から正職員への登用試験再開など、運転手の待遇改善に取り組む方針を示す。ただし民間には「人材を奪われかねない」との警戒感も。市役所内からは「官民が連携を深めて公共交通を維持しなければいけない局面。足並みが乱れては困る」といった声も漏れ、確保策は一筋縄ではいかなそうだ。

悪循環

 交通局路線バスは長年、経営赤字が続く。23年度の収支はマイナス4億1165万円(周遊バス、あいばす除く)。20年度に16路線、21年度に4路線を民間移譲してスリム化し、23年度には運賃を均一化(大人230円、小児120円)して利便性と収益性の向上を図ったものの、赤字体質から抜け出せていない。

 公営企業として収支改善が求められるが、運転手不足が影を落とす。利用状況を踏まえたダイヤ改正を25年7月に控え、市関係者は「運転手不足が続けば減便や路線網縮小といった影響は避けられない」とみる。交通局は民間バスや市電とスムーズに乗り継ぎできるようにし、利用者への影響を小さくして減収を食い止めるよう苦心している。

 第三者的な立場で交通局に経営努力を求めてきた市交通事業経営審議会の古川惠子会長=鹿児島女子短期大学名誉教授=は、「路線バスの維持存続は大きな課題。安定的な運営を目指してさらなる努力が求められている」と受け止める。

 減便となれば利便性が低下して客が離れ、減収で体力がなくなり、なお運転手確保が難しくなる悪循環。難局を乗り越えるため、交通局は限られた資源で効率的に事業運用する策を模索している。

■貸し切りバス継続

 鹿児島市交通局は路線バスのほかに、貸し切りバス事業を手がけている。運転手が不足する中、基幹である路線バスに注力しようと、2024年12月の市議会定例会に事業廃止関連議案を出したが、否決された。一時的に規模を縮小し、今後も継続する。

 貸し切りバス車両は8台ある。専任者はおらず、路線バス運転手の一部が兼務している。市議会は「収益性が見込め、廃止は運転手確保策の効果を見極めてからでも遅くはない」などとして否決した。

 交通局は、これまで応じてきた民間からの応援運行依頼を25年6月まで断り、7月のダイヤ改正以降は通常に戻す。

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