ハウスでコーヒー栽培に取り組む田口純弘さん=13日、南九州市頴娃町御領
鹿児島県南九州市頴娃の農業田口純弘さん(58)は、昨春からコーヒー豆の栽培に取り組んでいる。南薩の温暖な気候を生かし、近くのハウス4棟で約1000本を無加温で育てる。3~5年後の収穫を見込んでおり「頴娃産コーヒーとして広く発信し、いずれは特産品化を目指したい」と意気込む。
これまで露地とハウスでブルーベリーやフィンガーライムを育ててきた田口さん。約2年前、花卉(かき)農家の知人が体調を崩したことで、新たに農業用ハウスの活用を託された。栽培する作物を検討する中で、国産への需要が高まっているコーヒーに目を付けた。
熱帯植物のコーヒーは霜に弱く、離島を除く地域ではハウス栽培が中心。田口さんは福岡県の農園を視察し、基本を学んだ上で「前例のないことに挑戦したい」と冬場に暖房器具を使わない無加温栽培を選んだ。昨夏の台風では屋根部分が飛ばされ、今月の強い冷え込みでは一部の葉が落ちるアクシデントもあったが、高さ1.5メートル近くまで育つ木も出てきた。
「収穫できるまでの期間もコーヒーに関わりたい」と、昨年11月には自宅敷地内に焙煎(ばいせん)所を設置。仕入れた豆を焙煎して販売し、口コミで人気を集めるようになった。何より「地域のコーヒー好きの方々とのつながりができた」と喜ぶ。
周辺地域では過疎高齢化が進む中、後継者不足などによる遊休ハウスも散見される。田口さんは「コーヒー栽培の先例をつくることで、後に続く農家が出てきてほしい。地域活性化にもつながるはず」と期待を込める。