青色のペンキがはがされ、緑がかったうわぐすりが現れた薩摩焼レリーフ=鹿児島市役所本館正面玄関
鹿児島市の「顔」は、緑に輝く薩摩焼レリーフに-。山下町の市役所本館玄関を飾る8枚の陶製レリーフに塗られていたペンキがこのほど取り除かれ、90年近く前の建設当初の緑がかった釉薬(ゆうやく)が現れた。修復を進める市は、保存状態の良い正面4枚は塗り直さず、往時の姿で市民に親しんでもらう計画だ。
市管財課によると、レリーフは1937(昭和12)年の本館完成当時から設置されており、長太郎焼の初代・有山長太郎(1871~1940年)作。直径約80センチで正面に4枚、側面に2枚ずつの計8枚ある。いずれも杯と葉のようなものをあしらった洋風の同じデザインで、深みのある緑色の釉薬が施されている。
釉薬は酸化焼成で緑色に、還元焼成では赤く発色する「辰砂釉(しんしゃゆう)」とされる。太平洋戦争後に何らかの理由で青色のペンキが塗られ、本来の姿に戻るのは少なくとも半世紀以上ぶりとみられるという。
レリーフは市が昨年12月から修復中。側面の計4枚は、釉薬の剥離など劣化が進んでいるため、正面レリーフに近い緑色で塗装する。欠けた部分やひび割れは樹脂で埋める。3月下旬までに、足場が外され市民に披露される。
国の登録文化財となっている本館は戦時中の激しい空襲をくぐり抜けた貴重な建築物。レリーフも米軍機の機銃掃射を受けて破損したとの逸話も残る。
長太郎の孫で、修復にあたって助言した本窯長太郎焼(下福元町)の有山長佑さん(89)は「初代の作品が文化財として後世に残っていくのは孫としてうれしい」。市管財課の井立田訓課長は「ペンキを落とすのは困難と思っていたが、設置当時に近い状態で市民にお披露目できることとなり良かった。いい色だと思う」と話した。