〈資料写真〉2018年12月、新光糖業に持ち込まれるサトウキビ=中種子町野間
鹿児島県の奄美や種子島でサトウキビ収穫が最盛期を迎える中、製糖過程で生じる糖蜜を回収する船が故障し、一部工場で操業を停止する事態になっている。糖蜜を貯蔵するタンクが満杯に近づいているため、サトウキビの受け入れができず、収穫が遅れるなど農家にも影響が広がる。
東京の糖蜜業者が船を手配し、沖縄と鹿児島の製糖工場から糖蜜を回収している。業者によると、通常、繁忙期の1月下旬ごろからは2隻体制になるが、昨年末に1隻が故障した。特殊な船のため代替船の確保が難しく、修理や船員の手配の関係から現在は1隻で回収している。
製糖工場がある県内6島のうち、2番目に生産量が多い種子島。島内唯一の新光糖業中種子工場(中種子町)は、タンクの容量が限界に近づき、3月1日から最大27日まで操業を止めることを決めた。今月24~26日に島内1市2町で説明会を開き、農家に現状を報告した。
26日の中種子町の説明会では、「糖蜜業者から3月中旬以降に復旧したいと説明があった」との報告があったが、農家からは「老朽化した船で来年以降は大丈夫か」「キビの受け入れが止まれば収入がゼロになる」などの声が上がった。
操業停止の間は収穫ができない。本年度は台風などの影響がなく生育も順調だっただけに、中種子町きび甘藷(かんしょ)振興会の西田徹嗣会長(64)は「気温が上昇して花が咲き始めると糖度が落ち、重さも軽くなる」と懸念。生産者に支払われる交付金単価は糖度と収量から算定されるため、収穫の遅れは収入にも関わり、「次期作に向けた準備も遅れるため来年度の収量にも影響する」と気をもむ。
同町で農業法人を運営する梶屋良幸さん(74)は、収穫やキビの先端や葉を取り除く精脱作業のため、外国人6人を雇用している。「派遣会社を通じて延長した。仕事がなくても人手を確保しておく必要があり、人件費は約150万円膨らむ見込み」と明かす。
生和糖業喜界工場(喜界町)は、前年度産の糖蜜回収も遅れ、1月と2月に計7日間操業を停止した。今月21日に一部回収されたが、再びタンクが満杯になる3月上旬以降は、船が来るまで操業を停止せざるを得ないという。吉田克成取締役(59)は「配船次第だが、3月中に製糖を終えるはずが後ろにずれ込むかもしれない。従業員の3分の1はアルバイトや期間雇用。4月以降は人手を確保できない恐れがある」とこぼす。
富国製糖奄美工場(奄美市)は2月末からの操業停止期間を4日間延長する予定。他の県内4工場は糖蜜貯蔵プールを急きょ整備したり、自社農場の肥料にしたりするなどして、しのいでいる。
糖蜜業者は「なるべく早く2隻体制へ戻れるように努めている」としている。
◇鹿児島県が相談窓口
製糖過程で生じる糖蜜を回収する船のトラブルで、操業停止になることを受け、2月28日付で熊毛支庁に設置した。生産者を対象に、経営維持に向けた技術的な助言や資金に関する相談に応じる。資金相談はJA種子屋久、日本政策金融公庫鹿児島支店でも受け付ける。