物価高「おもいやり事業」を直撃…生活困窮者の相談増加、食料・物資値上がり、運営資金も頭打ち 制度継続へ現場は悩み、知恵をしぼる 鹿児島県内

2025/03/08 06:30
かごしまおもいやりネットワーク事業で法人担当者(右)から食料の現物支給を受ける相談者(県社会福祉法人経営者協議会提供)
かごしまおもいやりネットワーク事業で法人担当者(右)から食料の現物支給を受ける相談者(県社会福祉法人経営者協議会提供)
 県内28市町村の113の社会福祉法人が参加する「かごしまおもいやりネットワーク事業」が転換期にある。生活困窮者に生活物資や食料を現物給付してきた事業が物価上昇に直面している。参加法人や社協が拠出する運営資金も頭打ちで、2024年度から支給内容を見直した。担当者らは「これからも必要な制度。継続できるよう知恵を絞りたい」とする。

 昨年4月から参加する伊佐市社会福祉協議会は2月までに、緊急支援が必要と判断した6件に計13万円余りの現物給付を行った。ネットワークの支援基準に基づき、担当職員が買い物に同行したり、督促状を引き取ったりして精算を肩代わりした。

 要請する人は、大半が病気や障害で収入が少ない人だ。生活保護から自立したものの光熱費が払えず、「給料日前に電気が止まる」と相談に来た人もいた。同僚2人と担当する男性職員(49)は、「相談から給付まで3日以内に行い、必要に応じ再給付もする。公の手続きにはないスピーディーな支援ができる」とメリットを話す。

 事業は県社会福祉法人経営者協議会が2018年7月、「制度のはざまにいる人を支援したい」と立ち上げた。困りごとを抱える人から相談を受けて公的サービスへ橋渡しするほか、緊急時に現物給付する。

 初年度は29件(総額28万円)を支援。新型コロナ禍の20年度は176件(346万円)、物価が上がった23年度は197件(511万円)と急増した。

 23年度の給付額を見ると、食料費は前年度比1.1倍、家賃は1.4倍、水道代も2.7倍になった。目立つのが携帯電話代だ。機種代込みの契約など毎月の支払いが高額になる例が多発し、43万円に上った。前年度も51万円で、全体の1割近くを占めた。

 資金を出す法人は収入の大半を国からの報酬に頼る。人手不足を打開するには待遇改善も必要で物価高もあり、拠出が厳しくなっている。法人担当者らが参加する運営委員会は24年度から制度見直しに着手。携帯代を不支給とする一方、現物支給ではなく、社協の貸し付け制度やフードバンクの利用も勧める。

 24年度は12月末時点で、現物給付は前年同期の65%に当たる77件で、給付額は45%の168万円。久木元司委員長は「困っている人を助けるのは社会福祉法人の使命。見直しは心苦しいが、事業を続けるためにも必要な措置」と話す。

 事業を、地域を支える柔軟な仕組みづくりにつなげたいと考える人もいる。龍郷町の障害者支援施設の男性職員(48)は「法人が事業をアピールし、福祉や医療の枠を超えた連携を官民で進めていかなければ」と訴える。

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