〈資料写真〉自衛隊基地の整備が進む馬毛島=1月10日、西之表市の馬毛島上空(本社チャーター機から撮影)
鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地建設によって漁を営む権利が侵害されたとして、地元の漁師が国に対し工事差し止めを求めた訴訟の判決が11日、鹿児島地裁であり、窪田俊秀裁判長は請求を棄却した。原告側は福岡高裁宮崎支部に控訴する方針。
判決理由で窪田裁判長は、基地建設に伴い種子島漁協の正会員105人中99人の賛成で漁業権を一部放棄し、国による約22億円の漁業補償に同意した決議について、1989年の最高裁判決などを参照。「決議が違法、無効であるとはいえない」と指摘した。
工事によって漁業権が消滅・制限された区域で原告の集落が慣習上の漁業権を持っているという原告側主張は、「新漁業法が施行された1950年3月14日から2年の経過をもって消滅した」と退けた。
弁護団の菅野庄一弁護士は「多数決の力で得する人と不利益を被る人が完全に分かれる現実を裁判所は見過ごしている。少数者の利益が保護されなければ数の暴力になりかねない」。2024年3月に提訴した漁業男性(69)は「私たちが守ってきた漁場で生計を営む権利を強引に奪い去ることがあっていいのか」と語気を強めた。