手軽さとお得感、情報ツールでじわり浸透、スマホアプリ「いぶすきさんぽ」導入2年目 「地域通貨」の地位確立へ消費動向など利用者データ活用模索

2025/03/12 15:30
いぶすきさんぽについて説明する飲食店の関係者=指宿市十二町
いぶすきさんぽについて説明する飲食店の関係者=指宿市十二町
 鹿児島県指宿市のDMO(観光地経営組織)、いぶすき観光デザインが運用するスマートフォンアプリ「いぶすきさんぽ」が導入2年目に突入した。市内加盟店の情報確認やポイントの取得・利用ができるサービス。事業者や市民に浸透しつつある中、消費動向などのデータを経済発展へ生かせるかが焦点となる。

 いぶすきさんぽは、地域の消費動向を「見える化」し、リピーターの確保や経済活性化につなげようと、昨年1月中旬のいぶすき菜の花マラソンに合わせて運用が始まった。

 加盟店は飲食店やホテル、サービス業など多岐にわたり、事業者数は当初の56から2月末現在で84に増えた。一般の登録者数は7295人で、市内在住者と県内の市外在住者がそれぞれ約3割を占める。アプリを利用した購買金額は約7000万円に達した。

 新規登録者数はイベント開催時などを除けば減少しているものの、加盟店全体での購入回数や金額は一定の水準を維持している。事務局は「市民にアプリが定着してきたことを示す結果ではないか」と手応えをにじませる。

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 利用者にとっては、利便性やお得感が浸透に一役買っている。市内で年2回開かれる飲み食べ歩きイベント「いぶすきバル」では、昨秋からいぶすきさんぽを使った電子チケットを導入した。売り場に行かずにスマホ一つで購入・利用ができ、ポイントもたまる。

 昨秋と今年1月にあったバルでは、従来の紙版も含めたチケットの総販売数が前年実績を上回り、いずれも約3割が電子版だった。イベント時以外にも割引クーポンの配信や、ポイントアップキャンペーンを実施する店舗もあり、リピーター獲得につながっている。

 登録者に付与されるポイント分は事業者側が負担する仕組みだが、宣伝効果などのメリットはあるという。運用開始当初から加盟している飲食店の長寿庵は、店休日やフェアの情報をアプリのお知らせで発信している。南哲平店長は「店の交流サイト(SNS)などと合わせて、情報を発信するツールの一つになっている」と話す。

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 事務局は今後、登録者のニーズ把握に本腰を入れる。今年1月の菜の花マラソンでは、ランナーや応援者に300~800円のクーポンを配布。地域内での消費や周遊を促すとともに、利用状況から居住地や性別などの属性別に消費動向の検証を行った。

 こうした事業を重ね、蓄積したデータはターゲットやニーズを捉えた情報発信や商品に生かす計画だ。いぶすき観光デザインの秋元雅博理事長は「菜の花マラソンや菜の花マーチなど、リピーターの多いイベントを活用して、観光客が指宿に求めるものを探りたい。市民にも広く呼びかけ、地域通貨として一層の浸透を目指す」と語った。

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