子どもアドボカシーについて意見を交わす県内のアドボケイト
子どもの声を届ける「子どもアドボカシー」が注目されている。「代弁」「支持」の意味も持つ「アドボカシー」は、障害や年齢などさまざまな事情で意見表明が難しい人を支援すること。それを行う人を「アドボケイト」と呼ぶ。2024年4月施行の改正児童福祉法で都道府県に子どもの意見・意向表明や権利擁護に向けた環境整備が求められ、鹿児島でも4人が県登録のアドボケイトとして活動を始めた。
(連載「声をつなぐ・子どもアドボカシー始まる」㊤)
全国で相次いだ虐待事件が背景にある。16年に相模原市で児童相談所に保護を求めた中学2年の男子生徒が自殺した問題や19年に千葉県で起きた小学4年の女子児童の虐待死を受け、子どもの声を聞き取れていない現状が問題視された。
改正児童福祉法を受け、県はアドボケイトとして意見表明等支援員を公募し、昨年5月に4人を登録。11月から月2回程度、鹿児島市の中央児相の一時保護所を訪ね、子どもの声を聞いている。
子どもが親しみやすいよう本名は明かさず、ニックネームで活動する。子どもたちにはまず、国連子どもの権利条約の「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」の柱や、アドボケイトについて説明する。
その後、措置や援助方針に関する相談に限らず、聞いてほしいことがある子がいたら個別に面談する。誰かに伝えてほしい内容の場合、「何を」「誰に」「どのように」伝えてほしいかを確認。アドボケイトが代わりに伝えたり、子ども自身がアドボケイトと一緒に表明したりできる。
面談の希望者がいない時は、子どもたちと一緒に遊ぶ。寄り添い、話しやすい状況をどうつくるか。実習を兼ね、始まったばかりの活動は模索が続く。県子ども福祉課は「子どもの権利擁護の観点から子どもが意見を言いやすい体制整備を進めたい」とする。
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すべての子が活用の機会持てる環境を
意見表明等支援員の4人は、普段は女性支援や障害福祉、子どもに関わる仕事をしている。それぞれの思いを語ってもらった。
やまちゃん(48)は、社会的養護で育った人や生きづらさを抱えた人を支援してきた。その経験から、子ども期の環境や大人との関わりが将来に影響すると感じていた。「大人になる前の段階で何かできないか」と考えている。
「自分の声を意見として大事にしてもらえたという経験は子どもの発達に重要」と、なかむー(52)は話す。「アドボケイトは関係機関から独立し、子ども主体で動く存在。施設職員とは違う役割を担える」と期待する。
一時保護所は入れ替わりがあり、一度しか会えない場合もある。あんちゃん(51)は「さまざまな事情を抱え、権利を守られないことが多かったと思われる子に、子どもの権利を説明し、気持ちを引き出すのは簡単ではない」と明かす。
なおさんは「鹿児島に独立したアドボカシーセンターがあれば」と願う。「県の事業に限らず児童養護施設や障害児施設、学校も訪問できる。全ての子がアドボカシーにアクセスできる環境を目指していきたい」と語った。