JR宮崎駅-志布志駅を走る「ナッシートレイン宮崎」=25日、志布志市の志布志駅
鹿児島県志布志市のJR志布志駅は30日、開業100年を迎える。かつては志布志、大隅、日南の3路線が乗り入れる鉄道の一大拠点だった。志布志、大隅両線は廃止され、現在は日南線の始発・終着駅として存在感を示す。車社会の到来や人口減少の影響を受けて乗降客数が低迷する中、行政、観光関係者は利用促進や駅前活性化を模索する。
2月、志布志駅と串間駅のマルシェを鉄路ではしごする「つながるマルシェ」が開かれた。アニメ「ポケットモンスター」のデザイン車両が乗り入れ、駅は家族連れらでにぎわった。
「つながる-」は日南線利用促進と沿線活性化を目的に2017年に始まった。志布志駅側で開かれるのは「ぽっぽマルシェ」。市観光特産品協会が15年から2カ月に1回開いている。
若い世代が駅へ足を運ぶきっかけとなり、活性化に一役買ってきた。協会は夜開催やクリスマスなど内容を充実させるため、25年度から年3回の実施に切り替える。
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志布志駅は1925(大正14)年3月30日、志布志線の延伸で開業し大隅線、日南線も乗り入れた。志布志市誌や志布志町SL保存会の記念誌によると、55(昭和30)年に改築された2代目駅舎は3番線ホームまであり、機関区や車掌区が置かれ、周辺は職員が暮らす宿舎もありにぎわった。
だが、国鉄民営化に伴い大隅、志布志線は87(昭和62)年3月廃線となり、唯一残った日南線の専用駅として90年に現在地に移転した。日南線も利用減が続いており、JR九州は2024年、存廃を前提とせず油津-志布志間のあり方を沿線自治体と協議する意向を示し、25年1月に初会合を開いている。
志布志市と宮崎、日南、串間の沿線4市で構成するJR日南線利用促進連絡協議会は観光利用や交流人口増に活路を見いだす。
志布志市は団体運賃の全額助成制度を17年度開始。21年度に3市が加わって周知が進み、24年度は90団体超が利用した。
志布志駅発着、日南線で行く野球観戦ツアーも初企画。40人枠に7倍近い270人の応募があった。市総合政策課の前原将司さんは「市民の関心が高く、25年度も計画できれば。利用促進につながるよう助成制度と合わせて今後も続けたい」と話す。
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駅周辺は志布志港に近く、商業施設や公園があり、観光客や家族連れの憩いの場として可能性を秘める。
近くの鉄道記念公園は蒸気機関車(SL)C58112号機が静態展示され、人気は根強い。市は24年から同公園などを民間が暫定利用する「トライアル・サウンディング」を実施し、にぎわい創出を狙う。
市観光特産品協会によると、全線開通した都城志布志道路を使った宮崎方面からの観光客や問い合わせも増えつつある。30日に駅で開く100周年記念イベントを担当する同協会の高木優さん(41)は「駅に親しみ、鉄道で往復を楽しむきっかけになれば。日南線の車窓から見える海の景色は非日常。利用が増えるようPRを続けたい」と話した。