就役した海上輸送群の小型輸送艦「にほんばれ」=6日午前11時45分ごろ、広島県呉市の海上自衛隊呉基地
南西諸島への侵攻を阻止する部隊や車両、物資を運ぶ「自衛隊海上輸送群」の発足式が6日、司令部を置く海自呉基地(広島県呉市)であった。陸海空3自衛隊共同の新部隊。離島を守る部隊を迅速に展開し、装備品や物資を継続して補給する能力の底上げを図る。
式では、造船会社が小型輸送艦「にほんばれ」(全長80メートル、約2400トン)を中谷元防衛相に引き渡し、輸送艦には自衛艦旗が掲げられた。中谷防衛相は「陸上自衛官と海上自衛官が力を合わせる部隊の新編は歴史的に重要な一歩。全力で職務に精励することを期待する」と訓示した。
陸上幕僚監部によると、艦艇を運用する陸海空共同の部隊は自衛隊発足以来初めて。3月24日付で立ち上げた。陸自隊員が大半を占め、艦長は当面、海自隊員が務める。
部隊編成は群司令部約10人、第1海上輸送隊約50人、第2海上輸送隊約40人。第1輸送隊は中型輸送艦「ようこう」(全長約120メートル、約3500トン)=5月配備予定=、第2輸送隊は「にほんばれ」をそれぞれ運用する。
中型艦は本土から南西諸島への人員や物資輸送を担い、車両数十台を運ぶことができる。小型艦は南西諸島間の輸送任務を想定、十数台を輸送でき、砂浜に乗り付けることもできる。
防衛省は2027年度末までに艦艇を計10隻まで増やし、中型2隻、小型4隻、より小さい機動輸送艇4隻の体制とする方針。
◇中谷防衛相の一問一答
自衛隊海上輸送群が発足し、にほんばれを視察した中谷元防衛相と記者団とのやり取りは次の通り。
-まずは大臣からコメントを。
「南西地域に機動的に展開できる船の確保は自衛隊にとって長年の課題だった。今回の船は砂浜に上陸可能で小さな島にも展開しやすい。少ない隊員でも運用できる」
-海自隊員の深刻な人手不足もあり輸送群の大半が陸自隊員で構成される。
「陸上自衛官は2019年度から海上自衛隊の術科学校や部隊で必要な知識技能を習得した。今日接した隊員は使命感と責任感で充実していた」
-南西諸島にも部隊の拠点を設けるか。
「部隊の練度向上の観点から海自の主要な艦艇部隊が配備されている呉で発足した。26年度以降の体制は検討中で南西地域への配備の有無は言及する段階にない。わが国の防衛を万全にする観点から適切な配備場所を検討したい」