建設中のモデルハウス。資材高や人手不足が続く中、住宅メーカーは知恵を絞る=鹿児島市与次郎1丁目
今年に入り、鹿児島県内で住宅メーカーの倒産が相次いだ。長引く資材高に人手不足、日銀の追加利上げによる金利上昇と、住宅業界は「三重苦」に直面する。現場では、仕入れ方法を見直したり、代替用品を活用したりと利益確保へ試行錯誤が続く。
鹿児島県によると、2023年度に着工した一戸建て住宅は5018戸で前年度比7.5%減。輸入材不足から国産材高騰につながった「ウッドショック」など、資材高が顕著となる前の20年度と比べると9.1%落ちた。九州経済研究所(KER、鹿児島市)の福留一郎経済調査部長(58)は「資材や人件費高騰による販売価格の上昇やマンション需要の増加が影響している」と分析する。
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木材を含む住宅資材はことごとく高騰している。薩摩川内市の旭住宅では、20年ごろから年100万円ずつ上がった。特にアルミサッシやコンクリートが顕著で、寺迫洋平社長(46)は「今年は落ち着いてきているが、戻りきってはいない」とこぼす。
物価高もあり、どの業界でも価格転嫁は進む。「お互いのためにできるだけ受け入れるようにしている」と寺迫社長。現場ごとに発注していたものをまとめて頼むなど、仕入れ方法を見直し価格を抑える。
注文住宅を手がける七呂建設(鹿児島市)は、仕入価格の大半を木材が占める。現在はウッドショック前より約1.5%増えた。
対策として、資材の量や原材料価格を詳細に計算し適正な価格交渉を進める。七呂恵介社長(48)は「品質を維持した上で、木材以外は代替品を使うなど工夫している」と話す。
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日銀の追加利上げに伴う住宅ローン金利の上昇も向かい風に映る。寺迫社長は「顧客への心理的な影響はゼロではない」としつつ、「返済期間が長い住宅ローンも増え始め、毎月の返済額は抑えられる。家を建てる意欲はなくなっていないと感じる」と前向きだ。
七呂建設でも利上げの余波はなく、25年4月期の売上高は前年比20%増を見込む。七呂社長は「各社がいい物をつくり、競争することはお客さんのためにもなる。選ばれる努力を続けるだけ」と力を込めた。
一方で、技術者を含む人材確保は難題だ。鹿児島労働局によると、25年2月の有効求人倍率は全産業の1.08倍に対し、建築・土木・測量技術者は8.11倍と最も高い。販売を増やして人件費を上げようにも、家を建てる人が集まらない。
KERの福留部長は「人手が足りない分、工期は長くなり労務費もかさむ。低価格を売りにする手法は限界がくる。耐震や環境に配慮した住宅が優遇されるローンもあるため、性能のいい家を提供できるメーカーが優位になっていくだろう」との見通しを示した。