なぜ? 全国に公設ガソリンスタンドが増えている…民営の給油網が細るなか、自治体が新たな道を模索する

2025/04/21 11:23
昨夏閉店したガソリンスタンド。給油ホースや洗車設備がそのまま残されていた=4月上旬、鹿児島市春山町
昨夏閉店したガソリンスタンド。給油ホースや洗車設備がそのまま残されていた=4月上旬、鹿児島市春山町
 民間のガソリンスタンドの閉店が相次ぐ中、全国では、行政が施設を管理し民間が運営する「公設給油所」の設置が目立つ。地域ぐるみで生活インフラを守る仕組みで、過疎地を中心に増えている。

 奈良県南部の川上村は2017年4月、公設給油所を設置した。村唯一の給油所の経営者が高齢などを理由に、村へ廃業を相談したことがきっかけだった。

 村は設備を譲り受け、運営は一般社団法人へ委託する。くらし定住課の辰巳龍三課長(48)は「冬場は冷え込み灯油は欠かせない地域。残せて良かった」。

 ただ財源確保のため民間より価格は高くなりがち。近隣自治体へ給油に走る村民も少なくない。人口減はどこも同じで、燃料需要の先細りも不安要素だ。

 鹿児島県内では、十島村や三島村が移動式のポータブル給油機を置くミニ給油所を設置し、民間や団体などが運営する。十島村では、地域おこし協力隊員が売店と兼業で担う給油所もある。担当者は「島民のため運営の工夫で維持したい」と話す。



 大規模災害時、ガソリンは食料や水と並び、命に関わる大切な物資に位置付けられる。消防車や救急車への給油に加え、停電時に使用する発電機にもガソリンは必要だ。熊本地震では設備の損壊や停電で給油所の半数以上が使えず救助活動などに支障が出た。

 国は熊本地震を教訓に、自家発電機を備え災害時も供給できる「住民拠点サービスステーション」の整備を進める。発電機などは国が全額補助し、鹿児島県内でも411カ所(2024年11月現在)まで増えた。

 一方、ガソリンの供給自体が止まることも想定される。県内では23年8月、迷走した台風6号の影響でタンカーが接岸できず、多くの給油所が休業した。複合災害が起きないとも限らず、備えに終わりはない。

 行政もガソリンに頼らない防災策を模索する。鹿児島市は避難所の非常用電源として、災害時に電気自動車(EV)を無償で借りる協定を企業と結ぶ。南種子町はEV公用車8台を備え、24年8月の台風10号では各避難所へ派遣した。

 公用車や協定で用意できるEV車は限られる。現状は給油所の数が、地域の防災力を推し量る目安とも言える。南種子町の立石勝行企画課長は「EVはあくまでも代替の一つ。給油所と連携しながら万が一に備えたい」と話した。

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