薩摩藩に莫大な利益与えた「東洋の白銀」天然樟脳…朝鮮から渡来した「創業地」で復活 15代沈壽官さんが日置市に工場新設、美容商品を開発

2025/04/26 15:00
抽出された「天然樟脳」のパウダー(中央)
抽出された「天然樟脳」のパウダー(中央)
 朝鮮半島から薩摩焼と共に伝わった天然の「樟脳(しょうのう)」復活に向け、鹿児島県日置市東市来町美山の壽官陶苑は、クスノキから結晶を抽出し防虫剤やアロマセラピー素材を製造する工場を新設する。市と24日、立地協定を結んだ。未利用材活用の資源循環型のプロジェクトでもあり、代表の十五代沈壽官さん(65)は「歴史遺産を復活させ、新しい特産品をつくりたい」と意気込む。

 樟脳は1598(慶長3年)、韓国から美山に渡来した陶工が製造を始めたとされる。「東洋の白銀」と呼ばれ、薩摩藩にばく大な利益をもたらしパリ万博にも出品された。1962年の専売制廃止まで防虫剤や医薬品として珍重され、美山には「樟脳製造創業之地」という記念碑も立つ。

 沈さんは、記念碑の建立に先代が奔走していたことから、自身の還暦を機に復活を思い立った。文献を読み、プロジェクトメンバーの識者らに意見を求め、先進地を視察。南薩から持ち込むチップを蒸留し結晶を取り出し、パウダーやオイル、芳香水として商品化する予定だ。

 新工場名は「本場薩摩樟脳製造所」。陶苑社員駐車場の敷地約1800平方メートルに約85平方メートルの工場を建設する。5月に着工し8月完成、10月の操業を予定する。投資額は4000万円。障がい者支援として、5人の新規雇用を計画している。

 天然の樟脳製造は全国4カ所しか確認されていないという。プロジェクトでは、歴史遺産復活による美山の活性化、クスノキ活用による森林整備や抽出後チップの園芸装飾への利用などを目指す。

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