水俣病は家族を壊す…マイク切り問題から1年 環境相との懇談に臨んだ島の男性は早口で要望を述べた「記憶伝承へ慰霊碑建立を」

2025/05/02 07:00
浅尾慶一郎環境相に質問する水俣病被害者獅子島の会の滝下秀喜会長(中央)=1日、熊本県水俣市の出月公民館
浅尾慶一郎環境相に質問する水俣病被害者獅子島の会の滝下秀喜会長(中央)=1日、熊本県水俣市の出月公民館
 水俣病犠牲者慰霊式に合わせて熊本県水俣市を訪れた浅尾慶一郎環境相は1日、水俣病被害者獅子島の会(鹿児島県長島町)と懇談した。同会の滝下秀喜会長(65)は「公式確認の日に水俣に行けない人も多い。歴史を次世代に伝えるためにも、獅子島に慰霊碑を建立してほしい」と求めた。

 滝下さんは昨年、環境省が被害者団体の発言中にマイクを切ったため、他団体に時間を譲ろうと自らは早口で要望を読み上げた。今年は2時間超の懇談が設けられ、「十分に話ができたのは良かった。マイク切り問題をきっかけに、形ばかりでなく真剣に聞いてくれる雰囲気ができてきたんじゃないか」と語った。

 被害者団体によると、不知火海(八代海)に臨み、水俣市の対岸にある獅子島では、情報不足と差別によって救済が遅れ、1970年代になって初めて患者が確認された。2009年の水俣病特別措置法で多くの患者が救済対象となったが、医療福祉のインフラが乏しく、十分な支援を受けられない人もいる。

 滝下さんは「多くの人が関わって特措法ができたが、それでも認定されない人がいる。最終的な救済ができないか、真剣に話を聞いてほしい」と、国と県に要望書を手渡した。公式確認の日に獅子島に集う場がないことから「記憶を伝承するためにも、水俣を望む地に慰霊碑を建ててもらいたい」と要望した。

 鹿児島県の西正智環境林務部長は「十分な解決には至っていないと考えている。引き続き、健康不安のある人への検診などに取り組んでいく」と述べた。

 国側と被害者団体は懇談後、水俣病の資料を展示する民間施設「水俣病センター相思社」を訪れ、犠牲者の位牌に手を合わせた。滝下さんは浅尾氏に対し、「この位牌の背後にどれだけの人がいるか。1人の水俣病患者には家族ら大勢の人が関わっている。家族を壊す水俣病を二度と繰り返さないで」と訴えた。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >