当初苦戦も来館者数は右肩上がり 全面開業から5年、「よかど鹿児島」好調の理由はキャッシュレス普及だけじゃなかった

2025/05/08 06:30
多くの観光客らでにぎわった物産展=4月28日、鹿児島市金生町のよかど鹿児島
多くの観光客らでにぎわった物産展=4月28日、鹿児島市金生町のよかど鹿児島
 鹿児島市の鹿児島銀行が運営する商業施設「よかど鹿児島」が13日、開業から5年を迎える。県内で唯一、現金が使えない施設だ。当初こそ苦戦したものの、新型コロナウイルス禍でキャッシュレス決済が普及するとともに来館者数が伸びてきた。4月には施設前に観光バスの乗降所を整備し、新たなにぎわい創出につながっている。

 よかど鹿児島は2020年5月、全面開業した。鹿銀本店ビルと本店別館ビルの1、2階に飲食店や雑貨店など26店が並ぶ。同行のスマートフォン決済アプリ「Payどん」に加え、各種電子マネーやキャッシュカードでも支払える。

 市来彰浩マネージャー(40)は「当初は現金が使えないことへの厳しい意見が多かった」と振り返る。全面開業時はコロナ禍で、来館者数は伸び悩んだ。一方で、感染防止策で現金の受け渡しがないキャッシュレス決済が広く浸透したと感じている。

 同市下伊敷3丁目のパート女性(28)は「バス待ちでよく使う。普段からほぼキャッシュレスなので抵抗はない」と週3回ほど足を運ぶ。名山町から昨夏移転した鹿児島ブランドショップの堀脇大嗣主任(36)は「お釣りがいらず、小銭を用意する手間が省ける。売り上げの集計も早い」と利点を語る。

◆ ◇ ◆

 よかど鹿児島の特徴には、完全キャッシュレスのほかに「地域特化の運営」がある。26店舗の大半は地元事業者が名を連ねる。本店ビル1階の大広場では、自治体やテナントと連携した物産展や体験講座、県内プロスポーツのパブリックビューイングなど、年間約140ものイベントを開く。

 キャッシュレス決済普及との相乗効果もあり、20年度に約90万人だった来館者数は24年度には約170万人まで増えた。出店者も実感しており、開業時から店を構えるキノートヤクシマは24年度の売上高が21年度と比べ倍増した。

 郡山明久頭取(67)は「地場の新興企業のようなところを集め、地域商材をPRする場を目指して開業した。自社運営で大変だったが、試行錯誤を繰り返して進化してきた」と話す。

◆ ◇ ◆

 鹿銀は4月、施設前に観光バスの乗降所を整備した。観光客の天文館地区での回遊性を高める地域活性化策の一つだが、恩恵はよかど鹿児島にも波及する。

 4月28日に大広場で開いた物産展には、バスを利用したクルーズ船客が大勢訪れ、さつまあげや黒酢などを購入。神奈川県の主婦(82)は「バス停の近くで土産が買えて便利。会計が早いのも助かる」と笑顔を見せた。

 鹿児島ブランドショップの4月の売上高は、移転前の前年同月を大幅に上回る見込み。キノートヤクシマの村尾優子店長(59)は「旅行会社とも連携し集客につなげたい」と期待した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >