GW明けに増える不登校 千人以上を診た臨床心理士が提唱する「挫折しない17の手法」

2025/05/08 11:00
学びの杜学園に通う高校生と談笑する江口直美校長(右)=日置市伊集院
学びの杜学園に通う高校生と談笑する江口直美校長(右)=日置市伊集院
 新学期が始まって約1カ月。新しい環境で生活する児童生徒が、ゴールデンウイーク(GW)前後に学校への不安や体の不調などを訴えて、不登校につながる事例が毎年、見受けられる。専門家は、家庭での生活習慣の見直しや子どもの小さな変化を見逃さないよう訴える。

 不登校とは年間30日以上欠席すること。鹿児島県教育委員会によると、2023年度に不登校になった県内公立小中高校の児童生徒は計5432人。いずれも前年度を上回り、6年続けて最多を更新した。

 これまで千人以上の児童生徒をカウンセリングしてきた姶良市の臨床心理士、今村葉子さん(69)は「問題行動に対処するだけでなく、予防・改善のために家庭での生活習慣の見直しが重要」と話す。

 今村さんは、子どもの訴えや保護者アンケートを通じて、学校や社会で挫折しないための「17の手法」を導き出し、提唱している。

 「留守番ができる」「自分の洋服は自分で選べる」などの項目の中で、特に不登校改善に効果があったのは「親子の寝室を別にする」と「きょうだいの小遣いに年代差を設け、自分で管理させる」の二つという。「どちらも子どもの自立を促し、自信につながる。カウンセリングを受けた約8割が登校できるようになった」と実践を勧める。

 日置市の民間施設「学びの杜(もり)学園フリースクール」では、GW前後になると「不登校気味だった子どもを、新年度を機に登校させてみたが、うまくいかない」といった保護者からの相談が増えるという。

 江口直美校長(58)は「学校でのストレスを抱えた子どもが、唯一落ち着けるのは一人になれる自宅。そこで干渉されると、居場所がなくなる」と指摘。「心配する保護者の気持ちは分かるが、頑張れるエネルギーが蓄えられるまで見守ってほしい。買い物などの誘いを子どもが断るようになったら、SOSのサイン」と話す。

 県教委は県内の相談窓口やフリースクールの連絡先が一覧できる「不登校支援ガイド」をホームページに掲載し、家庭や学校での活用を呼び掛けている。

 高校教育課の瀬戸口信一生徒指導監(51)は「学校の長期休業中とその前後は、家庭で子どもの変化に注意して。気になる兆候があれば、学校やスクールカウンセラーらと連携して児童生徒を支えてほしい」と語った。

 教育相談の全国統一フリーダイヤル=0120(0)78310。

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