コメ価格の高騰は外食事業者も直撃している=8日、鹿児島市与次郎1丁目の焼肉なべしま
コメの価格高騰に歯止めがかからない中、鹿児島県内では今年に入り、弁当製造業者の倒産が相次いだ。コメが欠かせない事業者にとって現状は「死活問題」。政府は備蓄米の放出で価格安定を図るものの「効果は感じられない」と声が上がる。
県内では2月に鹿児島市の老舗仕出し店「おはらフーズ」、5月には有名駅弁を手がけてきた姶良市の「樹楽」が事業を停止した。いずれも新型コロナウイルス禍で落ちた売り上げが戻らず、人件費のほか原材料費の上昇が経営を圧迫した。
消費者ニーズを踏まえると、価格転嫁のハードルは高い。おはらフーズの関係者は「経費に合わせて値上げすると売れず、利益の確保が難しくなった」、2024年度以降はコメの仕入れ額が3倍以上になったという樹楽の梛木春幸社長は「販売価格も2、3倍に上げないと割に合わない状態だった」と話す。
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弁当はコメが占める割合が大きいのが特徴だ。仕出しや駅弁は冷めた状態で食べることを前提としており、梛木社長は「安いコメだと冷めた時に味が落ちる」。品質維持に加え、温度管理は食中毒対策の一つでもあり、安易に切り替えにくい現状を明かす。
1日約200キロ(1升炊きの炊飯器133台分)のコメを使う鹿児島市の明和食品でも、コメの仕入れ値は23年度の倍に上がった。年間契約で費用を抑えているものの、川邊篤史社長(37)は「肉の種類を変えるなど他の食材は代替ができるが、コメだけはどうにもできない」とこぼす。
飲食店も例外ではない。鹿児島、宮崎両県で21店舗運営する「鹿児島なべしま」(鹿児島市)は、焼き肉にあうコメがこだわりの一つ。「おかわり」の無料サービスは好評だ。仕入れ値は24年度以降は倍増した。「質を落とすわけにはいかない。受け入れるしかない」と古田直文社長(51)。メニュー内容や料金の改定でやり繰りする。
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スーパーなどからコメが姿を消した「令和の米騒動」は昨夏から続く。国は今年に入り備蓄米の放出に踏み切ったが、コメの平均価格は4月下旬になっても過去最高値を更新し続ける。
放出された備蓄米のうち小売店や外食事業者への流通は約2%にとどまる。樹楽の梛木社長は「備蓄米の放出で状況が少しは改善すると思ったが、持ちこたえられなかった」と嘆いた。
明和食品の川邊社長は「効果は感じられない。取引のある業者も『自分たちには回ってこない』と言っていた」と語る。なべしまの古田社長は「備蓄米は大手が入札していて、卸業者が間に入れば入るほど価格は上がる。工夫が必要なのではないか」と指摘した。