徳光スイカ
パンッ! 包丁を入れた瞬間、実がはじける音が響く。シャキシャキとした歯ごたえ。指宿市の山川岡児ケ水(おかちょがみず)で丹念に育てられ、希少性と唯一無二の味わいから“幻のスイカ”と称されるのが「徳光スイカ」だ。
1株に1玉だけを実らせる露地栽培で、自然の恵みをぎゅっと凝縮。糖度が高く、しっかり詰まった果肉の濃厚な味わいとみずみずしさが際立つ。
生産者の中山圭太さん(36)は、10代の頃から農業に引かれていた。霧島市でサラリーマンとして勤務していたとき、実家が農業を営む妻・怜美(さとみ)さん(42)と出会い、週末の農作業を手伝ううちに、その魅力に改めて心をつかまれた。会社を退職後、農業大学校で研修を受け、32歳で就農。現在は家族とともに、スイカをはじめ、スナップエンドウやサツマイモを栽培する。
徳光スイカはとても繊細で、わずかな衝撃で割れてしまうこともある。中山さんも、はじめは失敗の連続だったが「作物は、向き合ったぶんだけ応えてくれる」と真摯(しんし)に栽培に取り組んできた。一つひとつ手作業で丁寧に授粉し、成長を見守る。今では、「これまで食べたスイカで一番おいしかった」という声も届くようになった。
かつては“スイカ泥棒”を見張る台が立っていたというほど、徳光スイカのおいしさは広く知られていた。だが、生産に手間がかかることなどから、今では栽培する生産者は数えるほどになった。徳光スイカの魅力を、もう一度多くの人へ。「旬と笑顔を届けたい」。中山さんは今日も畑に立っている。
■「お母さんの店」
指宿や山川の農産物や加工品を販売している人気の老舗店。地元の生産者が直接持ち込んだ季節の野菜や果物が店頭に並び、「旬」を求めて、遠方から買い物にくる常連客も多い。サツマイモの季節に開催する詰め放題販売も大人気。徳光スイカは毎年人気が高く、午前中に売り切れることも。電話で事前に在庫を確認することがおすすめ。
住所:指宿市山川岡児ヶ水1686-3
電話:090(4475)9674
営業時間:午前8時半~午後5時
休み:月曜
駐車場:あり