完成した黒毛和牛の革を使用したグラブを広げる福迫一真さん=鹿児島市
鹿児島市田上8丁目に工房を構える福迫一真さん(36)が、黒毛和牛の皮革で野球用グラブを開発した。食肉処理後の副産物を有効利用し、野球を通して鹿児島をアピールするのが狙い。試作品を手にした少年野球の選手からは「捕りやすい」と好評だった。
福迫さんは鹿児島中央高校を卒業後、19歳から奈良県でグラブ作りを修業。7年後に鹿児島に戻り縫製会社に転職し、仕事の傍ら副業でグラブを作っていた。昨年8月に独立、グラブ製作や刺しゅうで生計を立てている。
黒毛和牛の皮革を使うアイデアは、2022年に鹿児島であった全国和牛能力共進会がきっかけ。食肉用として日本一になった鹿児島黒毛和牛だが、肉を落とした皮部分は国内では利用価値が低く、東南アジアに輸出されるなどしていた。そこで「鹿児島産の皮革を使わないのはもったいない」と、知り合いのつてで昨年12月に調達。実家を改築した工房で商品開発に取り組んだ。
福迫さんによると、一般的なグラブに使う北米産に比べ、食肉を取った後に残った皮革を使う黒毛和牛はやや薄め。ただ加工の際に取り除く部分が少なく、強度も保てる。
4月12日は南九州市で練習する少年野球チームにグラブを貸し出し、ノックで実際に使用してもらった。西指宿中学校(指宿市)の3年栫山皇輝さんは「素手のような感覚。打球を捕りやすかった」と話した。
グローブは一つ6万~7万円(税抜き)で販売予定。注文はメールhi.city.ballers@gmail.comで受け付ける。福迫さんは「九州・鹿児島で野球をしている人の手に届いてほしい。黒牛で革製品をつくって鹿児島をアピールしたい」と話した。