400億円超す大型事業、焦点は県判断の妥当性――目の前の費用削減か、将来の経済効果か 新体育館関連予算、県議会に提出

2025/06/04 11:47
県の新総合体育館事業が計画されるドルフィンポート跡地(中央)=鹿児島市、2024年1月、本社チャーター機から撮影
県の新総合体育館事業が計画されるドルフィンポート跡地(中央)=鹿児島市、2024年1月、本社チャーター機から撮影
 鹿児島県は鹿児島港本港区に計画する新総合体育館事業で、メインアリーナの観客席数を8000席とする設計関連費用を盛り込んだ2025年度補正予算案を4日開会の県議会6月定例会に提出する。建設費抑制よりも経済波及効果を重視した。県の判断の妥当性が議論で焦点になるが、7000席で488億円とした運営費を含む事業費は示していない。県は「整備などの手法が変わり比較できない」と説明する。

 県は22年策定の基本構想で、スポーツ大会の基準やコンサートなどの需要予測調査結果を基に、客席数を8000席程度と想定。25年に資材や人件費の上昇を受け、コスト圧縮のため7000席への削減を検討した。

■経済効果を重視

 協議したのは目の前の費用削減か、将来的な経済効果のどちらを重視するか。6000席にすると建設費は30億円減るが、経済効果は半減。7000席では建設費が15億円下がる一方、経済効果は年4億円減の年間47億円になると見積もった。県議会から経済効果や来場者の減少に懸念の声が上がり、再検討して8000席に決めた。一般財源負担額は膨らむ見通しとなる中、県は「安定的な財政運営は可能」と理解を求める。

 基本構想で示した年間の経済効果51億円は、県内の1年間の経済活動を表す「産業連関表」を基に県が試算した。来場者は20年度の需要予測調査から42万人と推計。宿泊や飲食など来場者1人当たりの消費額は、県内外の宿泊者・日帰り者別に設定して算出した。

 ただ基本構想策定から3年がたち、人口減や九州内にプロスポーツで利用可能な施設が完成し、再調査の必要性を指摘する意見もある。県は、専門家らに随時聞き取り調査をしており「直近の需要は把握できている」と主張。しかし、県議の1人は「大型事業を議論する上で試算の根拠が足りない」と疑問を呈する。

■500億円超?

 県は整備・運営手法を見直した。民間事業者に設計や建設、維持管理、運営までを一括発注するPFI手法から、個別発注する従来型に転換。これに伴い、今後は維持管理や運営を除く建設費のみで説明するという。

 3月時点の事業費は7000席で488億円。これに8000席にした場合に増えるという建設費17億円を単純に足すと505億円になるが、県は「3月は手法を比べるための概算値だった。従来型では設計や建設、維持管理をそれぞれで予算計上するため、今後は488億円を基にした数字で説明する予定はない」とする。

 今回の8000席は従来型で算出し建設費423億円、設計費9億円。スポーツ・コンベンションセンター整備課の西博夫課長は、維持管理・運営費は完成後に予算計上するため「現時点では試算できない」と話す。全体の事業費を示さない点を含めて、議会での追及は避けられそうにない。

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