大きな鍋で柳川煮を作る調理員=13日午前10時すぎ、鹿児島市立中央学校給食センター
長引く物価や米価の高騰が、学校給食にも影を落とす。福岡市では、小学校で出された、主菜が唐揚げ1個の給食がSNS上で批判を浴びた。鹿児島県内の関係者は頭を悩ませながらも、限られた予算内で味はもちろん、必要な栄養やバランスを満たすため、食材の変更や政府備蓄米を使うなど工夫を凝らす。
柳川煮やそぼろ、呉汁-。食欲をそそる匂いが立ちこめる。13日午前10時すぎ、鹿児島市の中央学校給食センター。調理員約60人が大量のおかずを手際よく調理し、スコップで大鍋から食缶に移していく。
センターは市内25の小・中学校約1万3000食の調理を担当する。センターから届ける給食は、小学校が1食320円、中学校が380円。物価高を受け4月から、それぞれ42円、52円ずつ値上げした。市が補てんしているため、保護者負担の増加は2円ずつ。
材料は、できるだけ旬の野菜を使い費用を抑える。キャベツが高騰した時期は、代わりにもやしの割合を増やした。デザート類は月3、4回から1、2回に減らし、やりくりしてきた。
献立は3、4カ月前に決まるため、食材が急に値上がりしても変更は容易でない。取引業者に再見積もりを依頼したり、週や月単位で調整したりする必要に迫られる。
また、自校式給食の場合はスケールメリットを生かせないため、物価高の影響を受けやすい。570食を作る八幡小学校(鹿児島市)は、肉じゃがの具材を牛肉から豚肉との半々にした。鶏もも肉は胸肉に、サバをイワシに変更したことも。野菜も生鮮と冷凍を混ぜるなどして費用を抑えているという。
■□■
米価高騰も追い打ちをかけた。県内の学校や給食センターに米やパンなどの食材を供給する鹿児島県学校給食会(姶良市)は2024年度、米約1080トンを取り扱った。「あきほなみ」を中心に、県産米を供給してきた。
本年度は、通年での確保が危ぶまれた。JA県経済連を通じて、政府が競争入札で出した24年度富山県産の備蓄米410~420トン(白米換算)を仕入れた。4月中旬から県内の学校給食で提供されている。
9月頃まで備蓄米でしのぎ、10月以降は県産米が確保できる見込みだ。鹿倉貢理事長は「米飯を提供できない事態は避けたかったので一安心」と胸をなで下ろす。米を確保できたものの、販売価格は4月から昨年度の1.9倍に上げざるをえなかった。ほかにもシイタケやかつお節など537品目を値上げした。
そんな中で需要が伸びているのが肉の代替品「大豆ミート」だ。21年度(3学期)に680キロだった販売量は、24年度(同)には1801キロと3倍近くに増えた。豚肉の6割ほどと安く、ひき肉に混ぜて使うとボリューム感を出せる。管理栄養士でもある平田さおり業務課長は「カロリーや脂質は下がるが、たんぱく源としては十分」と太鼓判を押す。
■□■
文部科学省が所管する学校給食摂取基準は小学生の1食当たりのエネルギーを530~780キロカロリーと定めるが、児童の健康状態や地域の実情に応じて弾力的な運用を認めている。
現場の担当者は、1日に必要なエネルギーの3分の1を目安に、予算内で味やバランス、食べやすさも考えて献立を組んできた。クリスマスや卒業シーズンには特別メニューを出すなど、季節感にも気を配る。
鹿児島市中央学校給食センターの浜田有希所長は「『今日は何かな』と楽しみにしてもらえる給食でありたい」と話した。