米巡視船「ストラトン」の操舵室を視察する比沿岸警備隊=18日、鹿児島市の鹿児島港本港区
日本、米国、フィリピン3カ国の海上保安機関が20日、初めて日本で合同訓練する。九州南方の公海上で船舶事故が起きたと想定し、消火活動や捜索救難を演習する。訓練の場に、鹿児島を選んだ狙いは何か。鶴田順・明治学院大学法学部准教授(国際法)に聞いた。
-鹿児島で訓練する理由は。
「鹿児島は、海上保安庁の各種リソース(資源)が充実しているからだ。ヘリコプターを搭載する大型巡視船が複数配備され、鹿児島市七ツ島2丁目の鹿児島港谷山2区にはヘリの整備拠点と船舶用燃料の給油施設が整備されている」
-訓練の目的は。
「3カ国の海上保安機関の連携強化と事案対処能力の向上を図る狙いがある。まずは、事案発生時における情報共有体制を確認すると思われる」
-海洋進出を強める中国が念頭にあるか。
「一般的に、各国の海上保安機関が国際的に連携、協力し、知見と技術を共有することで、アジアの海への進出を強める中国の動きをけん制することは重要だと考える」
「しかし、各国の周辺海域で発生した具体的な事案に対して、他国の海上保安機関にできることは限界がある。今回のような訓練を通じて、各海上保安機関の事案対処能力の向上を図る必要がある」
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つるた・じゅん 1973年生まれ。東大院修了。2005年4月~09年3月に海上保安大学校講師、09年4月~17年3月に同校准教授。17年4月から現職。専門は国際法。
◇公海上で船舶同士が衝突した想定
日本、米国、フィリピンは20日、日本では初となる海上保安機関3カ国合同訓練を鹿児島湾でする。第10管区海上保安本部によると「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、連携強化や相互理解を図る。
訓練は、九州南方の公海上で船舶同士が衝突し、火災や海中転落者が発生したとの想定。3カ国が連携して情報収集や捜索救助、火災船の消火などに当たる。
10管は巡視船「あさなぎ」(6000トン)をはじめとした巡視船艇計3隻と鹿児島航空基地所属のヘリコプター1機を投入する。フィリピンからは巡視船「テレサ・マグバヌア」(2265トン)、米国からは巡視船「ストラトン」(排水量4600トン)が参加する。3カ国合わせて300人規模の職員が訓練に臨む。
比国は12日、米国は16日に鹿児島市の鹿児島港本港区北ふ頭に入港した。各機関は18日までに、巡視船を相互に訪問し、装備や能力を確認。同市七ツ島の巡視船基地も視察した。
10管によると、日米比3カ国の合同訓練は、2023年6月にマニラ湾西方海域で実施している。今回の訓練について「特定の国や行動に対する抑止力強化は目的にしていない」としている。