小泉農相が踏み込んだJAのコメ「概算金」廃止要請 生産者は“買いたたき”懸念「価格下げるだけでなく、農家に寄り添って」

2025/06/21 11:45
霧島連山を望む水田で、代かき前に耕耘する農家=20日、伊佐市菱刈荒田
霧島連山を望む水田で、代かき前に耕耘する農家=20日、伊佐市菱刈荒田
 小泉進次郎農相が20日、各地のJAグループが農家に仮払いする「概算金」の廃止を求めた。直接買い取りになれば、コメ農家は経営計画が見通しやすくなる一方、高値で売れても差額は受け取れなくなる。長年続く慣習の動向に、鹿児島県内のコメ生産者からは「従来のやり方が分かりやすい」「変えるなら妥当な価格設定を」といった声が聞かれた。

 概算金の水準は毎年、作付け状況や消費動向などを元に地元JAが決める。2024年産米は前年の不作や生産コスト上昇が響き各地で引き上げられ、鹿児島県内では普通期の玄米が前年比約2倍の60キロ当たり約2万6000円だった。

 伊佐市の農業法人「Farm-K」の亀割浩介社長(49)は「市場にコメが余った時は、概算金が農家の最低価格保証となっていたが、今のように米価が高い時にはあまり影響が出るとは考えにくい」と指摘する。概算金廃止の意図については「複数年の契約栽培を増やすよう誘導したいのでは。価格の乱高下を抑制し、安定を狙っているのだろう」と推測した。

 生産者には戸惑いもある。志布志市で約8ヘクタールの稲作をする農家(74)は「代わりにいつ、いくら受け取れるのか」と先行きを不安視する。直接買い取りに移行するのであれば「JAは再生産できる金額や支払い時期も考慮して」と求めた。

 超早場米産地の種子島では、7月上旬からの収穫を控える。南種子町のコメ農家男性(61)は「高く買ってもらえるならいい」としつつ、「直接買い取りにすると、JAはコメが売れない事態に備え、買いたたこうとするのではないか」と警戒感をあらわにする。

 業界は慢性的な担い手不足で、資材や肥料など生産コストは高止まりし経営を圧迫する。男性は「小泉農相は売価を下げるだけでなく、農家にも寄り添ってほしい。このままでは廃業する人が増える」。中種子町のコメ農家男性(60)は「JAは消費者と農家の間で、適切な価格バランスを見い出して」と要望した。

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