仕事はできず、避難生活でかさむ出費――発生から1ヵ月のトカラ列島群発地震 出口見えず住民の不安は募る

2025/07/21 21:52
相次ぐ地震の影響で倒れた食器棚の中のコップ=17日、十島村悪石島(有川和則さん提供)
相次ぐ地震の影響で倒れた食器棚の中のコップ=17日、十島村悪石島(有川和則さん提供)
 最大震度6弱を観測した鹿児島県トカラ列島近海の群発地震は21日で、発生から1カ月が経過した。十島村悪石島から鹿児島市に島外避難した住民は「先が見えず、経済的な心配が大きい」と口にする。震度1以上の有感地震は6月21日からの累計で2200回を超え、県内で過去10年間に年間最多を記録した2021年の718回を大きく上回る。久保源一郎村長は「住民の安全を守るため最善を尽くしてきたが、それでも十分かどうか悩み続けている」と打ち明ける。

 悪石島から鹿児島市内に6日から避難していた漁師有川和則さん(73)は、21日夜のフェリーで帰島を決めた。「一緒に避難した人たちとも話し合い、地震の様子を見た上で自己判断した」と明かす。数日前に台風対策で一時帰島し、とんぼ返りしてきたばかり。「落ち着かない気持ちや、いつまでも甘えていられない思いが入り交じっている。島での生活がままならず、本当に長い1カ月を過ごした」と振り返る。

 食事代をはじめ、避難生活での出費はかさむものの、仕事ができず収入が得られない。「避難者はみんな似たり寄ったりの状況。生活面の心配が徐々に大きくなっている」と案じた。

 気象庁によると、トカラ列島近海の地震活動は、活発な期間と落ち着いた期間を繰り返しながら継続することが多い。「地震活動の終わり時期を特定することが難しい」と説明する。

 トカラ近海での活発化は21年12月4〜31日にもあり、有感地震が308回発生。年間最多718回の主因になった。県内で15〜24年に観測された有感地震の年間平均(306回)と比べても、今回の群発地震は際立って多い。

 久保村長は初期対応を振り返り「人的被害の有無に目が行きがちで、島民のメンタルケア対応に若干の遅れが出た。専門職の助けを借りながら、継続した支援に力を入れたい」と語る。震度4以上の地震が5日間起きなければ、希望者を帰島させる方針については「帰島できたとしても、再び大きな地震が来ないとは言い切れず不安だ。地震の終息を判断する材料がないことが苦しい」と漏らした。

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