初当選を果たしインタビューに答える尾辻朋実氏=21日、鹿児島市加治屋町
参院選鹿児島選挙区(改選数1)で初当選した無所属新人の尾辻朋実氏(44)が21日、南日本新聞のインタビューに応じた。自民重鎮の父を持ち、立憲民主党の推薦を受け選挙戦に臨んだ「異色の候補」が、自民元職に6万6000票の大差で勝利し、県内選挙区初の女性国会議員となった。選挙戦では地方の疲弊と物価高に苦しむ有権者の声を聞いてきた。「責任の重さを実感している」とし「都市と地方の格差是正に努めたい」と抱負を語った。
-当選から一夜明けた心境は。
「責任の重さをかみしめている。選挙期間中に訴えてきた政策を実現できるかはこれからだ。必死で食らいついていくしかない日々が始まる」
-秀久氏とは話をしたか。
「選挙中は一度も話をしなかった。今日の午後、久しぶりに電話で話ができ『よかったな』と声をかけられた。これからまた父に教わらなくてはいけないことがたくさんある。『だから元気でいてね』と伝えた」
-県内初の女性国会議員だ。
「文化的、歴史的背景からすると女性が鹿児島から国政に行くことは大きな意味があると思う。今まで女性の声が届きにくい部分はあったと思うので、その役割を果たしたい」
-戦いを振り返ってどうだったか。
「立民関係者や連合鹿児島の皆さんなど多くの人に支えていただいた。これまで自民党の中にどっぷりつかり、現実を見られていない部分もあった。選挙戦の中で毎日いろんな人と会い話を聞き、視野が広がり成長させてもらった。『自民党に戻るんだろう』『中途半端だ』と立ち位置を厳しく批判されたこともあった。最初に自民の公認候補に手を挙げたのは、父が自民議席を守ってきたので自然なことだった。ただ、そこで振られて初めて立ち止まった。戦い方も変わり、結果として皆さんの声を聞くことができた」
-ここまで支持が広がった要因をどう分析するか。
「政治経験も実績も何もない私への期待でしかない。何の指標もない中で、30万人の有権者が名前を書いてくれた。皆さんが抱えるいろんな思いがマグマのようにたまっていたのではないか。私への信任票は一票もないと思っている」
-秀久氏や支持者の力もあった。
「全県まんべんなく票を出してもらっている。間違いなく、尾辻秀久の力だと思っている」
-「自民に戻らない」と宣言し、共産党が候補擁立を取り下げた。
「ありがたかった。共産党さんの候補が立っていたら、立民支持者の『本当にこの人を信じていいのか』というわだかまりも今より残っていただろう。大きな転換点だった」
-無所属を貫く考えだ。取り組みたい政策は。
「先輩たちの知恵と経験を頼りながら、永田町の数の一つとして政策を前に進めたい。急激な物価高で普通に暮らしていた人さえ生活が苦しくなっている。東京の景気はいいが、地方は今、政策を間違えば(物価上昇と景気停滞が同時に起こる)スタグフレーションに陥る恐れすらある。都市と地方の乖離(かいり)を政治を動かしている人に認識してもらうところから始めたい。1次産業を守るためには農家の戸別所得補償制度の復活に取り組まないといけない」