ツバメ巣の下に傘を広げ、買い物客との共存を図る泉石蔵の売り場=20日、鹿児島市犬迫町
鹿児島市犬迫町の農産物直売所「泉石蔵」の店先で見上げると、色とりどりの傘越しにツバメのひなが巣から顔を出している。傘は巣からの“落とし物”を遮り、買い物客との共存を図る工夫。優しい見守りに日本野鳥の会(東京都)から感謝状が贈られた。
巣があるのは、石造りの米倉庫を利用した直売所の外壁のひさしの裏で、下には野菜や切り花の売り場がある。2009年に一つがいが営巣し子育てを始めて以来、毎年姿を見せるようになった。当初はビニールシートを広げたが、店内が暗くなったことから、傘を逆さにかけるアイデアが生まれ、スタッフが持ち寄った。
数年前、巣がカラスに襲われた際に、黄色いナイロンひもを提げると防げると聞いて対策。以後は安心して子育てしているようという。ひなの成長を楽しみに訪れる客も多い。
泉石蔵の今和泉きく子代表(74)によると、巣は現在7、8個。今季は越冬した一つがいに加え、5個は既に巣立ちしたとみられるが、ほかにも出入りする様子がある。
日本野鳥の会かごしま県支部メンバーが20日、感謝状と副賞を届けた。柳田一郎支部長(71)は「人の出入りの多い場所で、優しく見守っていただけているのは素晴らしい」。今和泉代表は「ツバメが来るのは自然で当たり前のことをしているだけ。毎年、あいさつしてくれているようでかわいい」と話した。