ダンスのステップに、鹿児島おはら節が出てしまった
ザッザッザッ。スーツを装備した約70人の1年生が1列になり、女子寮に向かって歩いていく。ドラクエでもこんな大人数のパーティーは見たことない。絶対に携帯番号を手に入れるという使命を抱く勇者70人の眼光は鋭く、魔王も城から逃げ出すだろう。
10分ほどで女子寮の前に着いた。そこにはピンクのハッピを装備した2人の女性が立っていた。どうやら寮を仕切る2年生の役員らしい。
「ようこそ男子寮のみなさん。それでは5列に並んでくださーい!」
「はい!」。勇者たちは急いで整列した。
「ありがとうございます。それではご対面」。ピンクハッピが女子寮の両開きの扉をゆっくりと開けた。勇者サトル(僕)の闘いが始まる。
ゴゴゴゴゴゴ…ガシャーン!
女子寮の1年生約70人がきれいに着飾って現れた。
「1人1人男子寮の生徒の横に並んでくださーい!」
サトルの隣にはかわいい女の子が現れた。
「ユキコっていいます。よろしくお願いします!」
「サ、サト、サトルでぇす…」。サトルは緊張でうまく口が動かない。
「ペアになったら手をつないで、女子寮に入ってくださーい」。サトルは緊張で手を動かせない。ユキコがサトルの手を握ってきた。サトルの手から手汗がほとばしる。ユキコに3のダメージ!
「じゃ、じゃあ!行きましょうか」。サトルは慣れない標準語を使おうとしてかんでしまった。サトルの手からさらに手汗がほとばしる。ユキコに3のダメージ!
ダンス会場に着いた。「今から音楽流れますので、早速踊ってみてくださーい」。ピンクハッピの声がこだまし、会場に軽快な音楽が流れた。
「お願いしまあああーす!」。サトルは緊張から、声のボリュームを間違った。ユキコの鼓膜に10のダメージ!
サトルは音楽に合わせてボックスステップを踏んだ。
「サ、サトルくんのステップ、私のとちょっと違うね」。サトルのステップには鹿児島おはら節が出ていた。
「そ、そんな事なかど!一緒やらよ!」
サトルの口から突然、鹿児島弁が飛びだした。
「えっ、何?」。ユキコはますます混乱し、2人の足がもつれサトルは尻もちをついた。サトルに5のダメージ!
「大丈夫?」。ユキコがサトルに手を伸ばし、サトルは手を握り返した。ユキコは手汗で3のダメージ!
「みんな!うまく踊れましたか?ここからはしばらくご歓談でーす」。ピンクハッピの声がこだまする。
「私ちょっと友達のとこに行ってくるね」。ユキコは逃げだしてしまった。闘いが終わった。
しばらくすると、同学年で鹿児島出身の山中が話しかけてきた。「お前も1人か。どうする?」「一緒に話しかけに行こうぜ!」「おう!」
山中が仲間になった。「よろしくな!」。サトルは山中と握手した。山中は手汗で3のダメージ!
つづく