2021年に鹿児島県内の新型コロナウイルス宿泊療養施設で、県医師会の元職員の男性に性的暴行を受けたとして、女性が約1140万円の損害賠償を求めた裁判で、鹿児島地裁は30日、女性の訴えを棄却した。前原栄智裁判長は「同意によるもので不法行為は成立しない」とした。女性の代理人弁護士は「事実誤認がある」などとして、即日控訴したと明らかにした。
女性は23年2月に提訴し、同意の有無が主な争点だった。訴状などによると、21年8〜9月の間に性的暴行を複数回受け、精神的苦痛を感じ、うつ病などと診断されたと主張。強制わいせつ罪や強制性交致傷罪に該当する民法上の不法行為だと訴えていた。
事件を巡っては、女性が刑事責任を問うため、22年1月に鹿児島中央署に告訴状を持参したものの、受理対象となるか検討されず、規定に沿った対応がなされなかった経緯がある。県警は不適切だったとして、関係職員を処分している。
告訴状の受理後、男性は23年6月に書類送検され、鹿児島地検は同12月に嫌疑不十分で不起訴とした。女性側は不服として鹿児島検察審査会に申し立てたが、検審は24年10月に「不起訴相当」と議決した。