便座に尻がはまって抜け出せなくなる前に…「自力でトイレ続けたい」。理学療法士が教える道具要らずの「ゆっくり運動」

2025/08/03 15:09
四つ数えながら腰を落とす。ひざがつま先より出ないよう注意する
四つ数えながら腰を落とす。ひざがつま先より出ないよう注意する
 年を取ると、筋力や柔軟性が衰えてできなくなることが増える。中でもトイレでの排せつは大きな問題だ。できるだけ長く、自力で用を足し続けるためにはどうすればいいか。鹿児島県理学療法士協会に、効果的な運動について聞いた。

 同協会理事の榎畑純二さん(56)=鹿屋市・恒心会おぐら病院リハビリテーション部長=によると、トイレでの排せつは、はしゃがんだり立ち上がったりする筋肉が必要だ。尻や太もも前側にあり、衰えると、転倒や洋式トイレの便座に尻がはまって抜け出せなくなるなどの危険がある。

 立ち座りで使う筋肉を鍛えるのがスクワット。足を肩幅に開き、両手を前に伸ばして腰を落とす。不安ならいすを利用してもいい。尻を突き出し、ひざはつま先より出さない。立った状態からしゃがむまで四つ数え、ひざが伸びきらないようにしながら「5、6、7」で戻る動作を10回1セット。朝と夕、週3回ほど繰り返す。

 もう一つ大事なのが、すねの筋肉だ。足首の動きを助け、トイレ内の方向転換で重要な役割を果たす。いすなどに座り、足の指先を曲げてつま先を上げ下げする。かかとは着けたまま、1日20回程度繰り返す。

 腹圧を鍛えると、排便がスムーズになる。あおむけになり、鼻から息を吸って口から吐き出す腹式呼吸をする。左右の手で、胸と腹部の高さが常に同じになるよう意識する。1日5回程度。榎畑さんは「運動も呼吸も“ゆっくり”が肝心。続けることで筋力が維持され、けがの予防にもなる」と語った。

◇認知症やフレイル抑制に

 鹿児島大学医学部保健学科・牧迫飛雄馬教授(46)=理学療法学=の話 体を動かし鍛えることは、筋力アップだけでなく、認知症や加齢で心身が衰えるフレイル(虚弱)の発症リスクの抑制につながる。

 体は動かさないと衰える。鍛えるのに遅いということはない。衰えを感じたら、今回紹介したような運動を始めてほしい。長く続けることが肝要だ。

 運動するだけでなく、買い物に行ったり人と会ったりして、鍛えた筋力を使うことも大切。そうした活動が生活に張りを与え、心身の健康維持につながる。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >