戦争との向き合い方について意見を交わすトークセッションの参加者=8日、鹿屋市のリナシティかのや
戦後80年の節目に戦争とどう向き合うかを考えるシンポジウムが8日、鹿児島県鹿屋市のリナシティかのやであった。市の子ども平和学習ガイドや戦争体験者、研究者が意見を交わし、悲劇を二度と繰り返さないため、歴史の継承の方策を考えた。
トークセッションでは子どもガイド3人、戦争を体験した同市高須町の立元良三さん(95)、市内外で戦跡を研究する慶応大学の安藤広道教授(60)=考古学=が登壇した。ガイドで田崎小学校6年の上富公輔さんは、戦争中につらかったことを質問。立元さんが「掩体壕(えんたいごう)造りのために、毎日土砂を運んだこと。米軍が爆弾を落とした時に防空壕に逃げ、数メートル離れたところに爆弾が落ちたのは本当に怖かった」と答えた。
安藤教授は講演で「平和のために戦争の話をしているのに、(考え方の違いで)分断を生んでは何のために語っているのか分からなくなってしまう」と指摘し、戦争の歴史に「唯一の正解」はないことを強調した。
戦争に関連した各国の犠牲者数や、日本による中国への空襲に触れ「立場によって戦争への見解や思いは異なる。世界は多様な意見にあふれ、分からないことだらけなはずだ。大いに悩みながら平和について考えてほしい」と呼びかけた。
平和を願う子どもたちのメッセージを募り、旧海軍航空基地があった鹿屋から発信するため、実行委員会が毎年開く「平和の花束」のセレモニーの一環で開催された。
◇
鹿屋市のリナシティかのやで8日、戦後80年に合わせた特別企画展が始まった。写真やジオラマ、動画など資料300点以上を展示し、アジア太平洋戦争下や戦後の同市の歴史や暮らし、市内にあった海軍基地から出撃した特別攻撃隊などについて紹介する。17日まで。
戦争体験者の証言を文章や写真、インタビュー動画で伝えるコーナーには、元特攻隊員で茶道裏千家前家元、千玄室さんらが登場。人間爆弾「桜花」の実物大模型や、桜花の神雷部隊の宿舎として使われた野里国民学校の200分の1ジオラマで、特攻の実相を伝えるエリアもある。
このほか、展示に関する問題を解く高校生以下向けのクイズラリー、戦時下を疑似体験できる仮想現実(VR)、同市川東町に残る掩体壕の構造が分かる3Dデータの公開コーナーなどもある。
オープニングセレモニーには、市が育成した子ども平和学習ガイド8人が参加。全員で順番に「平和は願うだけでは守れない。言葉や行動にして、戦争のない未来を選び続ける」と誓いの言葉を述べた。
入場無料。午前10時~午後8時。市ふるさとPR課=0994(31)1121。