新しくできた「イベント・体験フロア」。スポーツや「桃太郎電鉄」が楽しめるほか、右側のホールでは開校式などが開かれる
不登校の子どもたちが社会とつながる糸口に-。鹿児島市教育委員会は、児童生徒の居場所づくりの一環として、メタバース(仮想空間)を活用して、来月で1年となる。昨年9月運用を始め、利用枠200人に対し7月末で登録は51人。より多くの子どもに使ってもらおうと、体験会や人気ゲームの教育版を導入するなど工夫を凝らす。
「アバター(分身)の名前や髪形は自由に設定していいよ」。7月中旬、市教委が開いた「フレンドステップ・メタバース」体験会。オンラインを含め市内の小中学生ら19人が参加し、児童生徒支援課の職員から使い方を学んだ。
IDとパスワードで「入室」すると、アバターが端末の画面に表示される。まず「学習フロア」に入り、自分の席を決める。好きな場所へ移動しても、そのまま過ごしてもいい、と職員が説明する。「自習席」では学習目標を設定し、学習時間や学習内容の記録を残せる。「学習支援席」は予約制で、市の学習支援員から個別指導を受けられる。
このほか、「図書館」は市の電子図書館とつながっており、本の検索や閲覧ができる。「教室」では、動画で特別授業も。体験会の日は、ワインを蒸留してエタノールを取り出す理科の授業が配信されていた。
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仮想空間は、コミュニケーションの場にもなる。アバター同士でのビデオ通話や、チャットでの交流が可能だ。児童生徒支援課の支援員が「さくら先生」「ぽんた先生」として常駐し、悩み相談などがあればスクールカウンセラーにつなぐ態勢を整えている。
本年度から「イベント・体験フロア」を新設。サッカーやチェスを楽しめる。さらに人気ゲーム「桃太郎電鉄」の教育版も加わり、遊びながら地名や特産物などを学べる。同課の吉元利裕課長は、「子どもたちの声を聞きながらバージョンアップを図っていきたい」と話す。
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フレンドステップ・メタバースの利用は在籍校を通じて申し込む。平日の午前8時半~午後4時半であれば、好きな時間に利用できる。利用状況は各在籍校にも共有され、基本的に出席日数として認められる。
体験会に参加した中学1年の女子生徒は「対面じゃないので自分に合っている。図書館を使えるのもうれしい」。保護者も「勉強は頑張っているが、自己流で偏りがち。メタバースを通じてアドバイスをもらえそう」と歓迎する。
鹿児島市の2024年度の不登校は小学生725人、中学生1295人で、増加傾向が続く。吉元課長は「外の世界とつながり、外出や登校の足がかりになれば。まずは気軽に使ってみてほしい」と呼びかけた。