水に浸かった宴会場、温泉パイプも土砂に埋まる――お盆の書き入れ時 一転…無情の記録的大雨 旅館や温泉を再び災禍が襲う 霧島地区

2025/08/13 06:18
天降川沿いにある田島本館の通路。上部まで冠水した=12日、霧島市牧園
天降川沿いにある田島本館の通路。上部まで冠水した=12日、霧島市牧園
 8日の記録的大雨による浸水や断水被害で、鹿児島県霧島地区の一部宿泊施設や温泉では休業を余儀なくされている。新燃岳噴火の影響が一段落しつつある中での災禍に、「お盆の書き入れ時で、これからという時に」とため息が漏れる。

 霧島市の妙見温泉郷にある「おりはし旅館」(同市牧園町下中津川)は、離れ1棟が全壊したほか、宴会場も浸水し8月中は休業する。女将(おかみ)の巻睦子さん(73)は「新燃岳噴火で相次いだキャンセルが、やっと落ち着いてきたのに」。毎年のようにお盆に宿泊する常連客もいて「申し訳なさや悲しい気持ち」と明かす。片付けに追われる傍ら、予約客に休業の電話をかけ続ける。

 近くの田島本館でも通路の一部が冠水し、温泉施設には土砂が流れ込みドアが壊れた。眼前を流れる天降川のせせらぎが売りの旅館。榎並直子支配人(62)は「大雨での増水は毎年のように見ているが、約20年働いている中でも1番水量が多かった」と振り返る。湯源から温泉を引くパイプも土砂で埋まり、営業再開のめどは立っていない。

 霧島市では断水被害も続く。同市隼人の「湯本庵清姫」は、利用者に不便をかけないようにと臨時休館中だ。予約担当の加藤恵さん(41)は「お盆は3世代や親戚で集まる人も多く、キャンセルをお願いするのは心苦しい」と話す。断水は11日に復旧したものの、様子を見ながら営業再開の時期を探る。

 同市牧園にある温泉旅館を経営する男性は、大雨による直接的な被害はなかった。ただ予約は伸び悩んでいるという。男性は「今夏は、そもそも大阪・関西万博で観光需要が乏しい上に、新燃岳噴火の影響もあった。ようやくお盆の書き入れ時と思ったら、今度は大雨とは」と嘆いた。

 霧島市観光PR課の山口清行課長(56)は「商工関連団体とも連携し必要な支援を模索しながら、紅葉や登山など霧島観光がピークを迎える秋には誘客できるよう尽力する」と話した。

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