「歴史的建造物」県教育会館を9月に解体、跡地に共同住宅 昭和初期に建ち、戦禍も逃れる

2025/08/14 14:32
9月にも解体が始まる鹿児島県教育会館=鹿児島市山下町
9月にも解体が始まる鹿児島県教育会館=鹿児島市山下町
 鹿児島市山下町に昭和初期に建てられた鉄筋コンクリート建築物「鹿児島県教育会館」が、9月にも解体される。所有する県教育会館維持財団は8月29日に会館と敷地を、新築マンション分譲などを手がけるフージャースコーポレーション(東京都)に引き渡し、同社が共同住宅に建て替える。日本建築家協会の鹿児島地域会など3団体は、「貴重な歴史的建築物」として記録や保存を求めている。

 フージャースコーポレーションや同財団によると、会館跡に建設するのは鉄筋コンクリート6階建ての共同住宅。高さは約19メートルで、25戸ほどが入る。来年7月に着工し、2028年3月完成を見込む。

 同社は教育会館の歴史を引き継ぐため、会館の部材の一部を保存する展示スペースを設ける予定。誰でも見ることができるように国道10号の歩道沿いに造り、現在会館で使われている階段手すりの鉄製支柱などを飾る計画という。

 会館は1931年完成で地下1階地上3階建て。中央公園に隣接する。戦時中の空襲で焼け野原となった鹿児島市街地では、戦前の建築様式を伝える貴重な建物である一方で、老朽化が進んでいた。財団は当初、「貴重な建築物で街のシンボル」として維持活用を条件に売却先を探したが見つからず、最終的に解体前提で売却した。

 財団の原園正敏常務理事は「建物を残す努力をしたがやむを得なかった。一部が保存されることは非常にありがたい。今後は入居者や通行人にも興味を持ってほしい」と話した。現会館に入る県教職員組合など7団体は、8月中に下竜尾町の新会館に移転する。

■建物の調査や記録、活用を要望
 日本建築家協会九州支部と同支部鹿児島地域会(鯵坂徹代表)、県建築士事務所協会(八反田淳一会長)は12日までに、県教育会館は「地元で100年近く親しまれてきたランドマーク」として建物の調査や記録、活用を求める要望書を、県教育会館維持財団と跡地を再開発するフージャースコーポレーションに出した。

 建物の活用を望む市民県民の声が多くあるとして、(1)既存建物を活用する事業への再考(2)できない場合は解体前の調査と記録-などを求めている。

 同地域会によると、会館は文化庁の近代化遺産総合調査の対象物件に含まれる。鯵坂代表(元鹿児島大学教授)は「所有者が同意すれば、重要文化財や登録文化財に指定登録される価値ある歴史的建造物。調査は当時の鹿児島の建築技術を知る手がかりとなり、大変重要だ」と話す。

 3団体は財団の協力を得て8月27、28日、会館で一般向けの見学会を開く予定。鹿児島地域会事務局fujisaki@kii.bbiq.jp

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