5年かけて学び被爆体験の「伝承者」になった鹿児島県出身の65歳男性 直面した〝壁〟と平和を次代につなげる〝決意〟

2025/08/15 07:00
被爆体験の伝承者として話をする前田博美さん=1日、広島市中区
被爆体験の伝承者として話をする前田博美さん=1日、広島市中区
 米軍による広島、長崎への原爆投下から80年。被爆者が少なくなる中、広島市は2012年度から被爆体験や平和への思いを受け継ぐ「伝承者」の養成に取り組んでいる。鹿児島県霧島市出身の前田博美さん(65)は3歳と8歳で被爆した男女の体験を継承し、15日、平和記念資料館で講話に立つ。戦後80年の「終戦の日」。「大切な日で責任を感じている。準備して臨む」と意気込んでいる。

 伝承者は、被爆に関する講義や実習などおおむね2年間の養成研修がある。6月末時点で281人が研修を終え、同館や学校で講話をしている。

 前田さんは鹿児島県内で働き定年退職。大学時代を過ごした広島で「被爆の継承に携わりたい」と19年に研修を申し込み、鹿児島から通った。新型コロナウイルス禍を経て24年7月に修了し、現在は広島と鹿児島の2拠点生活をしながら活動している。

 今年3月、初めて同館で伝承講話を担当した。講話の後、2人の来館者が感想を伝えに来てくれ、「真剣に話を聞いてくれてうれしかった」と振り返る。

 一方、一日4回の講話に誰も来ない日があるという。「伝えたい気持ちはいっぱいあるのに。周知方法を考え直さなければ」。伝承者の高齢化も課題に挙げる。

 依頼があれば、県内外で派遣講話も可能だ。鹿児島での活動にも意欲をみせ、「なぜ日本が間違った道に進んだのか、鹿児島の若い世代にも関心を持ってもらいたい」と話した。

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