特攻隊員の手紙朗読を前に学芸員の説明を聞く高校生=14日、南さつま市の万世特攻平和祈念館
終戦から15日で80年が経過した。戦争を直接体験した世代が少なくなる中、惨禍を二度と繰り返さないため、戦跡、手紙といった残されたモノや証言を通じて記憶を継承する取り組みが鹿児島県内で広がっている。関わる高校生は「戦争を考えるきっかけになった」と話す。
「どうしてガイドになったの」
「曽祖父が戦争に行ったと聞いて」
鹿屋市のリナシティかのやで17日まで開かれている特別企画展。初日の8日、地元の戦争の歴史などを振り返る映像や証言、資料が展示された会場で、ガイドを務める鹿屋中央高校1年の小石田蒼麿さんが、来場者と会話を交わしていた。
幼い頃は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」に夢中になった。曽祖父が戦場で肩を撃たれたことを家族から聞き、戦争への関心がより高まった。だが同世代に戦争の話題を向けると「もういいよ」と反応は薄かった。
「若い世代が戦争を知らないままでいるのはまずい」。市内に通学する小中高生が戦跡を案内する「子ども平和学習ガイド」に応募し、昨年8月から市認定ガイドや大学教授の講習を受けてきた。
学べば学ぶほど戦争が大きく複雑な問題だと分かってきた。「戦争には多角的な見方がある。まだまだ考えがまとまらない」。鹿屋の地は米軍の空襲を受けた一方、中国を爆撃する役割を担ったように、立場によって認識は変わる。「先輩に学び、鹿屋でガイドを続けながら深めていきたい」
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南さつま市の万世特攻平和祈念館では15日、万世飛行場から飛び立った特攻隊員が家族に宛てた手紙を県内の高校生が朗読する。手紙を読み込んできた生徒たちは14日に祈念館を訪れ、特攻作戦の背景や隊員の人柄、エピソードなどを学芸員から聞いた。
甲南高校1年の堂園栞菜さん(16)は展示されている肉筆の手紙を見て、「書いている姿を想像できた。この地で確かに生きていたことを実感した」と話す。
特攻については「今の時代では絶対に認められない作戦が立てられ、同世代の隊員が出撃した事実は重い。命令した人や組織が、どういう考えを持っていたのかもっと知りたい」と考えるようになった。
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鹿児島大学の兼城糸絵准教授(43)=文化人類学=は、奄美群島の戦争に関する記憶と記録の継承について、同僚や学生と共同で研究している。奄美大島や加計呂麻島、徳之島、喜界島の戦跡を調べ、周囲の住民にインタビューした。
「残された戦跡を介して記憶を継承する重要度が高まっている」と指摘。「学生たちは現地で戦跡にまつわる戦時中の話や日常の生活を聞くことで戦争に対して現実味を感じていた」と振り返る。
大学で仮想現実(VR)技術を使って戦跡を体験するイベントも開いた。「現地に行けなくても触れやすい形に残しておくことが戦争を考える入り口になる」。今冬には喜界島で学生と現地調査する。