「アリーナで絶叫し『明日も頑張ろう』って思ってほしい」と語る長渕剛=鹿児島市の南日本新聞社
全国ツアー「HOPE」を終えたばかりの長渕剛は今秋、「7ナイツ・スペシャル・イン・アリーナ」を鹿児島市の西原商会アリーナ(南日本新聞社など主催)など4都市で開催する。南日本新聞社を訪れた長渕から意気込みを聞いた。
-今年はHOPEツアーに続き、鹿児島、大阪、名古屋、横浜のアリーナで7公演も予定しており、精力的だ。
「HOPEツアーでは16ホールで7万人と会ったので、さらに拡大したステージを見てほしい。鹿児島は僕の生まれ故郷。ゴツゴツとした桜島の岩肌は父の背中を、凪(な)いだ錦江湾は優しき母のにおいを思い起こさせる。2004年の桜島オールナイトコンサートには7万人以上が集まってくれた。命を絶つ覚悟でやったことが、眼前のここにいるとよみがえってくる。会場に4世代で来てくれる方々を見ると、僕の肉親に近い情を感じる。これはほかの県にはないこと。とにかく古里に帰らねば、という思いに熱く駆られる」
-桜島で2025年秋にライブをやりたいと発言していた。今回のアリーナツアーはそれに代わるものか。
「そうではない。2年前からやるつもりでいろんなところを回ったが、経済的な状況を含め20年前とは違うことが分かった。ことをし損じないよう、ちょっと待てよ、となった。桜島は一つの象徴ではあるが、桜島に固執するかどうかは、時代の流れとともに考えていきたい」
-アーティストとして絶えず変化している。楽曲づくりで意識していることは。
「僕が書いているようで、僕が書いていない歌、つまり聴く人の歌になってほしいと思う。作家としてのエゴをたたきつぶしながら、その時代の人たちに届くのかどうかを考えて曲をつくっている」
-ツアーを支える体のケアに余念がない。
「27歳の日本武道館の2デイズで、『明日へ向かって』を歌いながら、明日に向かえない自分がいた。四十数本のツアーの折り返しで疲労困憊(こんぱい)していた。悔しくて拳で床を血が出るまでたたいたことを覚えている。それでもまだ『体(たい)』に着手できず、そこから8年後の35歳のとき、本気で鍛えるために一番厳しいジムに入った」
「それから日課のように『体』を窮めている。鹿児島はそれにうってつけの場所で、多くの仲間がいるし、豊かな自然もある。山奥に入ったり、川に飛び込んだり、自然のものを食べたりしながら『体』を鍛えることができる。だからしょっちゅう帰ってきていますね」
-鹿児島では無人島キャンプや母校の卒業式ライブをはじめ子どもたちと接する活動をしてきた。これからも続けるのか。
「毎年やりたいところだが、企業協賛だなんだと大人の事情が入ると、信念が揺らぐときがある。信念を曲げてまでやるのが一番つらい。でも最近、僕に協力してくれる鹿児島の“おやじ衆”もできた。恒例行事としてやれたらいいなと思う」
-古里を離れ社会に飛び立つ若者は多い。田舎者であることが困難に立ち向かう発火点になった、と言っていた。
「20代から『大いなる田舎者』とあえて言っていた。鹿児島の田舎もんだと思って舐(な)めんじゃねーぞ、と。ただ『舐めるなよ』で終わるところが、田舎者であることで付加価値が付く。頼れるところは、親でも兄弟でもなく『大いなる田舎者』というそこしかない。今でもそれが強い武器となっている」
-アリーナ公演を楽しみにしているファンにメッセージを。
「血気盛んに拳を上げ続けて45年以上が過ぎた。あと3年で50周年を迎える。僕は相も変わらずこの町に戻ってきて拳を上げている。この秋、また帰ってきます。日常から解き放たれ、拳を上げ、絶叫するつもりで、会場に足を運んでいただきたい」
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長渕剛「7 NIGHTS SPECIAL in ARENA」鹿児島公演 11月8、9日、鹿児島市の西原商会アリーナ。午後5時半開演。全席指定1万3000円(8日公演は完売)。問い合わせはGAKUONユニティ・フェイス=0985(20)7111(平日正午〜午後5時)